IBM、100万個の「演算するメモリ群」で作られた非ノイマン型マシンで機械学習のデモを発表。従来のコンピュータより200倍高速で高効率と
IBMは相変化メモリを用いてメモリ群が演算能力を持つ非ノイマン型コンピュータのデモに成功したと発表した。これは「Computational Memory」、演算するメモリによる新しいコンピュータの姿を切り開くものだ。
現在のコンピュータのほとんどは「ノイマン型」と呼ばれるアーキテクチャで実現されています。
ノイマン型アーキテクチャは、メモリにデータを記憶し、そのデータを処理する際にはデータをプロセッサに移動して処理をし、結果をまたメモリに移動して保存する、という仕組みになっています。
データはつねにメモリとプロセッサのあいだをつなぐ「バス」を通じて行き来しなければならないため、大量のデータを高速に処理しようとしてもこのバスの部分の帯域や速度がボトルネックになり、一定以上の性能向上が難しくなります。
ノイマン型のコンピュータはこのバスによるボトルネック、いわゆる「フォン・ノイマン・ボトルネック」から逃れられません。
そこで大量のデータをより高速に処理するため、フォン・ノイマン・ボトルネックを本質的に持たない非ノイマン型のコンピュータの開発に多くの企業が乗り出しています。
100万個の相変化メモリから構成される非ノイマン型マシン
IBM Researchは、100万個の相変化メモリ(Phase Change Memory)から構成された、メモリ群自身が演算能力を持つ非ノイマン型コンピュータのプロトタイプで機械学習を行うデモンストレーションを行ったと発表しました。
相変化メモリデバイスは、ゲルマニウムアンチモンテルル化物合金を2つの電極ではさんだもの。
このデバイスに小さな電流を加えると熱が発生し、非結晶の状態から結晶状態へと変化します。こうした動的な性質を用いて演算(新野注:おそらく機械学習における閾値の変化のようなものと想像されます)を行うと説明されています。
Today, IBM Research is announcing that its scientists have demonstrated that an unsupervised machine-learning algorithm, running on one million phase change memory (PCM) devices, successfully found temporal correlations in unknown data streams.
本日、IBMリサーチは、100万個の相変化メモリデバイス上で教師なし機械学習のアルゴリズムを用いて、未知のデータストリームから時間的相関を発見するデモンストレーションを行ったことを発表します。
「IBM Scientists Demonstrate In-memory Computing with 1 Million Devices for Applications in AI」から
こうしたコンピュータの仕組みは「In-memory Computing」(インメモリコンピューティング)や「Computational Memory」(コンピュテーショナルメモリ)と呼ばれるもの。メモリ(もしくはメモリ群)に演算能力を持たせることで、データをメモリから大きく移動させることなく処理し、結果もそのまま保持できる仕組みを持つため、大量のデータを高速かつ高効率に処理できるというものです。
Computational Memoryの計算能力やアルゴリズムは、別にあるプロセッシングユニットからコントロールされます。
IBMはこのマシンを従来のノイマン型コンピュータと組み合わせ、機械学習やAIの処理を高速に行うコプロセッサ的なものにすると説明しています。
メモリにも演算能力を持たせる
これまでメモリは単純にデータを一時的に記憶するためだけの存在でした。Computational Memoryでは、メモリにプリミティブな演算能力を持たせ、それを大量に組み合わせることで機械学習を実現するというものです。
これはまるでシナプスが集まって知能を実現している、脳により近い構造だといえるでしょう。
IBM FellowのEvangelos Eleftheriou博士は「これは私たちにとって、新しいハードウェアマテリアルやデバイス、アーキテクチャの研究としてのAI物理(physics of AI)の研究における重要な前進である」とコメントしています。
あわせて読みたい
JavaScriptのダイナミックインポートをついに実装。より高速化したJavaScriptエンジン「V8 Release 6.3」リリース
≪前の記事
マネージドKubernetesの利用料を無料に。Kubernetes専用の新コンテナサービス「AKS」(Azure Container Service)、マイクロソフトが発表