AWSやAzure、Googleなど大規模クラウドへのコモディティサーバ販売から、HPEが撤退を宣言。非常に利益が小さいからと

2017年10月25日

HPEは、AWSやAzure、Googleなど大規模クラウドベンダに対するコモディティサーバの販売から撤退することを明らかにした。今後クラウド向けサーバとオンプレミスサーバがそれぞれ違った発展をするきっかけになるのだろうか。


世界最大のサーバベンダであるヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)のプレジデント Antonio Neri氏は、AWSやMicrosoft Azure、Googleといったトップのクラウドベンダに対して、カスタムデザインのコモディティサーバの販売をこれ以上行わないことを、先週行われた証券アナリスト向けの発表会「Hewlett Packard Enterprise Securities Analyst Meeting 2017」で明らかにしました。

ヒューレット・パッカード・エンタープライズのプレジデント Antonio Neri氏

2017年9月にガートナーが発表した2017年第二四半期のサーバ市場調査では、ヒューレット・パッカード・エンタープライズは49万台のサーバを出荷し、23%のシェアを持つ世界最大のサーバベンダです。

そのサーバベンダが、世界で最も大量にコモディティサーバを購入している顧客であるクラウドベンダ向けのビジネスから事実上撤退することを明らかにしたことは、サーバ市場の大きな転換期を示すものといえます。

なぜ同社はクラウドベンダ向けのサーバ市場から撤退するのでしょうか。Neri氏はその理由を「非常に利益が小さいから」と説明しています。

AWS、Azure、google向けのコモディティサーバの販売を中止する

Neri氏は、「HPE Next」と呼ぶ同社の新戦略を紹介。利益と成長にフォーカスするため、シンプル化、実行、そしてイノベーションを加速するための投資を積極的に行っていくとしました(いかにも証券アナリスト向けという感じですが)。

HPE Nextのスライド

成長にフォーカスするためのシンプル化戦略の一環として、顧客のセグメント別に見直しが行われることになります。

ここで同社が「Tier 1」として分類するAWSやAzure、Googleなどハイパースケールのクラウドプロバイダに対して、Neri氏は次のように説明しました。

「We will Stop selling custom-designed commodity servers while continuing to sell higher-margin product」(カスタマイズされたコモディティサーバの販売を中止する。ただしハイマージンの製品販売は継続する)

その理由として、Tier1に対するコモディティサーバの販売は非常にマージンが小さく、販売後もサービスを通じたビジネス機会がほとんどないからだと説明しました。

figNeri氏が示した、Tier 1に対するコモディティサーバ販売中止の説明。下線はPublickeyによる

一方、その次のセグメントである「Tier 2/3」は、クラウドを用いてビジネスを提供するDropbox、セールスフォース・ドットコムなどが含まれます。

Neri氏は、Tier 2/3や大企業は、コンピュータプラットフォームの標準化を重視するため、カスタマイズ抜きのサーバを提供することで利益を確保しながらビジネスを行っていくと説明。

さらにSMB(中堅中小規模)向けには非常に大きなビジネス機会があるとし、この市場に合った製品やマーケティングを実行してその機会を捉えていくとしました。

なぜ大規模クラウドベンダ向けは利益が小さいのか

AWSやAzure、Googleなどの大規模クラウドベンダは、自社データセンターや自社クラウドの処理に特化し、徹底的に最適化した独自設計サーバを大量に調達しています。

一般にこうしたサーバは、いわゆるノーブランドやホワイトボックスと呼ばれるサーバを製造している台湾などの業者に、クラウドベンダが直接発注するとみられています。

つまり大規模クラウドベンダに対してカスタムデザインのコモディティサーバを提供するビジネスというのは、こうしたノーブランドの業者との競争になります。ヒューレット・パッカード・エンタープライズのNeri氏が「非常にマージンが小さい」、つまり利益がほとんど出ないビジネスだと説明するのもうなずけるところです。

サーバの進化とビジネスはこれからどうなるのか?

クラウドの普及によって、これからますますクラウドベンダがサーバを大量に調達するようになる一方で、オンプレミス向けのサーバ出荷が減っていくであろうことは、IT業界の誰もが予想していることです。

そうした中で、大規模クラウド向けのコモディティサーバ販売からの撤退は、世界最大のサーバベンダにとって非常に大胆な決断であることは間違いないでしょう。

今回の動きは、大規模クラウド向けにカスタマイズされたサーバと、企業のデータセンターなどオンプレミス向けのサーバが、これまで以上に異なる存在になり、異なる方向へと発展していく岐路になるかもしれません。

その先にあるのが、最終的にオンプレミス向けサーバのニーズのほとんどはクラウドへ吸い取られ、いつかオンプレミス向けのサーバ市場というのはほとんどなくなってしまう世界なのだとすれば、ヒューレット・パッカード・エンタープライズをはじめとするサーバベンダには、まだこの先いくつかの重要な決断をしなければならない時期がやってくるのでしょう。

参考:AWSに寄せていくAzure、ストレージを物理配送する「Azure Data Box」を発表。アベイラビリティゾーンやリザーブドインスタンスに続き
参考:クラウドインフラ、AWSがシェア3割超で突出したリーダーを維持。小規模ベンダは上位ベンダにシェアを奪われている。2017年第4四半期、Synergy Research Group

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Junichi Niino(jniino)
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