スケールアウトストレージのオールフラッシュ版、EMCが開発中のプロジェクト「Nitro」は、これまでのIsilonとどう違う?
ストレージを追加していくだけで容量や性能が向上していくスケールアウトストレージは、かつては特定の製品だけが実現できていた特別な技術でしたが、現在ではハイパーコンバージドインフラストラクチャなどで実現され、ストレージのメインストリームになろうとしています。
EMCのIsilonはそのスケールアウトストレージの代表的な製品として長年にわたって知られてきました。現在EMCは、そのIsilonのオールフラッシュ版であるプロジェクト「Nitro」を開発していることを昨年の5月に発表しています。
Nitroは、単純にIsilonの中身をフラッシュストレージに入れ替えたのではなく、内部アーキテクチャを変更し、フラッシュストレージに最適化したものだとされています。
オールフラッシュ版のスケールアウトストレージにはどのような市場が想定され、従来のスケールアウトストレージとどう違うのか? EMCでIsilonのプリンシパルシステムエンジニアを務めるArseny Chernov氏に聞きました。
オーフルラッシュ化したIsilonにどんなニーズがあるのか?
──── Isilonはこれまでスケールアウトストレージとして大容量でスケーラブルな点が特徴でした。オーフルラッシュ化されるIsilonには、どのような用途でのニーズがあるのでしょうか?
Chernov氏 これまでのオールフラッシュストレージは、おもに性能が要求されるリレーショナルデータベースのような構造化されたデータを中心に扱ってきました。しかしデータ全体の8割は非構造化データであり、ビジネスにおいてこの部分の価値が高まってきています。
特に4つの業種において、こうした非構造化データでの高性能化への要求が高まっていると思います。
1つはメディア産業です。動画の解像度やフレームレートは拡大の一途です。リオ五輪では4K映像が配信され、日本政府は2020年までに8Kの放送を開始する予定だとしています。こうして情報量は拡大していきます。
2つ目は集積回路などの設計です。回路は微細化する中で、ほかのプロセスも複雑になっており、回路のシミュレーション処理量も爆発的に拡大しています。ストレージへの要求もそれだけ高いものになってきています。
3つ目はライフサイエンスの分野。ゲノムの解析は毎年処理量が増えています。4つ目はビッグデータの分析です。データを生成するデバイスやセンサーは増加しており、能力も向上しています。
このように非構造化データの処理は加速度的に増加しており、NASのオールフラッシュストレージへの需要も増加しています。
SSDの性能を最大限活用できるアーキテクチャに
──── オールフラッシュ化したIsilonとは、単に従来のIsilonのHDDの代わりにSSDを搭載したわけではないんですよね? どのような変更があるのでしょうか?
Chernov氏 フラッシュのスピードを最大限に活用できる内部アーキテクチャへと変わりました。Isilonはx86アーキテクチャを採用していますが、従来はマザーボードに1つか2つのプロセッサを搭載し、そこにHDDを接続するというものでした。新アーキテクチャでは小さなフォームファクタのブレードに最新のパワフルなマルチコアのプロセッサを搭載しSSDを接続、それを4Uの筐体に高密度で搭載しています。
これによってエンタープライズグレードの冗長性と可用性を実現し、容易な保守も実現します。
もちろん、このアーキテクチャを採用するためには新しいソフトウェアも必要でした。データの新しいプロテクションレベル、新しいパターンのクラスタ構成を実現するソフトウェアを開発しました。
OSであるOneFSはFreeBSD10をベースにしており、これを今後も拡張していきます。
──── Isilonはスケールアウトストレージの代表的な製品ですが、いまや多くのストレージがスケールアウト機能を備えようとしています。そのなかでIsilonの今後の位置づけはどうなっていくのでしょう?
Chernov氏 個人的には企業のデータセンターでオブジェクトテクノロジーの採用が増えていくと考えています。
Isilonはもともと、大きなボリュームのファイルや非構造化データを保存し、長期的にアーカイブしていくといった用途に多く使われていました。
今後はさらに、大容量を実現しつつもより高性能が求められるデータサービス、複雑性を持つアプリケーションやクラウド対応、オブジェクトストレージ対応などをオンプレミス、オフプレミスで対応していきます。
またDELL EMCの製品群の中でも、総所有コストの低い、スケールアウトNAS、スケールアウトオブジェクトストレージ、スケールアウトブロックストレージを実現する製品として顧客に選択されるようなロードマップを考えています。
あわせて読みたい
組織全体でGitHubを使うようになるまで(前編)~ 使い方が分からない? 使うのが怖い? Cookpad TechConf 2017
≪前の記事
クックパッドの海外展開プロダクト開発ノウハウとは(後編)~ORは「オワ」か?「オレゴン州」か? 問題。Cookpad TechConf 2017