AWS、KVMベースの新ハイパーバイザ採用を明らかに。「C5インスタンスタイプ」から
AWSの巨大なクラウドを支える基盤ソフトウェアのひとつがXenベースのハイパーバイザだ。しかしAWSは新インスタンスタイプの「C5」で、KVMベースの新ハイパーバイザ採用を明らかにした。
AWSはハイパフォーマンスコンピューティング向けの新しいインスタンスタイプ「C5インスタンスタイプ」を発表しました。
C5インスタンスタイプの最大の特徴は、KVMベースのハイパーバイザを採用した点にあります。
これまでAWSはXenベースのハイパーバイザを使用してきたことが知られています。新ハイパーバイザの採用はAWSの基盤を構成する代表的なソフトウェアの変更であり、大きなニュースと言えます。
C5インスタンスタイプの「新しいハイパーバイザ」
ただしC5インスタンスの発表ではKVMの名称は出てこず、単に「新しいハイパーバイザ」と説明されています。「Now Available – Compute-Intensive C5 Instances for Amazon EC2」から一部を引用します。
The C5 instance type incorporates the latest generation of our hardware offloads, and also takes another big step forward with the addition of a new hypervisor that runs hand-in-glove with our hardware.
The new hypervisor allows us to give you access to all of the processing power provided by the host hardware, while also making performance even more consistent and further raising the bar on secur
C5インスタンスタイプは新世代のハードウェアオフロード機能を組み込み、さらにハードウェアとともに稼働する新しいハイパーバイザによってさらに大きな前進を遂げています。
新しいハイパーバイザーは、ホストハードウェアによって提供されるすべての処理能力を利用可能で、より一貫した性能を実現し、さらにセキュリティを強化できます。
C5インスタンスタイプで使われているのは、インテルとAWSによってEC2専用にカスタマイズされたXeon Platinum 8000シリーズプロセッサです。
新ハイパーバイザは、このEC2専用にカスタマイズされたプロセッサに合わせて投入されたものと考えられます。
FAQページで「KVMベースのハイパーバイザ」と明かされる
この新しいハイパーバイザがKVMであることが示されるのは、EC2のFAQページ(英語版)です。
そこに、C5インスタンスタイプのハイパーバイザはKVMをベースにしたと説明されています。
C5 instances use a new EC2 hypervisor that is based on core KVM technology.
C5インスタンスは新しいEC2ハイパーバイザを使っており、それはコアKVMテクノロジーをベースにしたものです。
「コアKVMテクノロジーをベースにしたもの」と説明されているということはつまり、KVMをそのまま使っているのではなく、おそらくKVMをAWS用にカスタマイズしているということなのでしょう。
そして、APIとしては従来のXenベースのハイパーバイザと何もかわらないと説明されています。
No, all the public facing APIs for interacting with EC2 instances that run using the new EC2 hypervisor will remain the same. For example, the “hypervisor” field of the DescribeInstances response, which will continue to report “xen” for all EC2 instances, even those running under the new hypervisor. This field may be removed in a future revision of the EC2 API.
いいえ、新ハイパーバイザで稼働するすべてのEC2インスタンスとやりとりするためのパブリックなAPIは従来と変わりません。例えば、DescribeInstancesの返値の“hypervisor”フィールドであっても、引き続きすべてのEC2インスタンスで“xen”を返します。たとえそれば新しいハイパーバイザであってもです。このフィールドはおそらく将来のEC2 APIのバージョンでは削除されるでしょう。
ただし、次のようにブート時の違いによって新ハイパーバイザに気がつくことがあるとも説明されています。
For example, instances running under the new hypervisor boot from EBS volumes using an NVMe interface. Instances running under Xen boot from an emulated IDE hard drive, and switch to the Xen paravirtualized block device drivers.
将来はすべてKVMベースになるのか?
今後すべての新インスタンスがKVMベースの新ハイパーバイザを使うことになるのか、という問いに、FAQでは次のように回答されています。
Eventually all new instance types will use the new EC2 hypervisor, but in the near term, some new instance types will use Xen depending on the requirements of the platform.
最終的にはすべての新インスタンスタイプが新しいEC2ハイパーバイザを使うことになるでしょう。しかし短期的には、いくつかの新インスタンスタイプではプラットフォームの要件によってXenを使うことになるでしょう。
AWSでは少しずつインスタンスタイプの入れ替えが行われているため、長期的に見てすべてのハイパーバイザが新ハイパーバイザになっていくように読めます。
しかしAWSの巨大な仮想マシン群を現在支えているのはXenベースのハイパーバイザであり、これがすっかりなくなるとしても、それはまだずいぶん先のことではないでしょうか。
新ハイパーバイザは11月末からラスベガスで開催される「AWS re:Invent 2017」で詳細が説明されるとのことです。
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