起業・スタートアップ。起業するために、また継続させるために必要なこととは? −AIIT起業塾#8−[PR]
Google、Facebookなど、創業わずか数年の会社が世界的な企業となる事例が増えていることから、昨今では起業やスタートアップに関する注目が高まっています。起業・スタートアップの実際の現場での先駆者から様々な話題を聞き、議論をするためのイベントである「AIIT起業塾#8 起業・スタートアップ」が、2016年12月18日、産業技術大学院大学秋葉原サテライトキャンパスにて開催され、4名の登壇者が講演とディスカッションを行いました。
「起業 〜ベンチャーキャピタルから見たスタートアップ〜」
ベンチャーキャピタルATOMICOの岩田氏は、起業と独立の違いの説明をした上で、スタートアップに重点を置いた話をしました。
起業をしたほうが良いと考える人としないほうが良いと考える人の違いは、ある事柄に対する考え方の違いでしかありません。例えば、起業をするにあたり何事も自分でやらなければいけないという点に関しては、様々な経験やスキルが身につくと捉えることが重要であると言います。
氏は資金繰りについて、起業をする際の最初の資金について多くの手段はあるが、バランスが難しいと主張します。自己資金だけでなく、投資家からの調達を受けた場合は経営に関するアドバイスも受けられる強みがあります。
また、bento.jpを創業した永澤氏を招き、現役起業家として起業に対する様々な疑問に対して対談形式で答えました。永澤氏は学生時代に起業をしているため、現役の学生に対して、自分のスキルや経験を手早く高めるために起業するのも手段として考えて良いと言います。
起業は素晴らしい!今すぐ起業しよう。そのために必要なのは・・・?
株式会社ペンシル取締役会長の覚田氏は、サラリーマンとして人の夢を実現するために働くのが良いか、起業をして自分の夢を実現するために働くことが良いかを問いかけます。
起業は大きく分けて一攫千金型と問題解決型があります。一攫千金型とは、株式公開、売却などのExitを主目的とした類型で、問題解決型は、イノベーションを主目的とした類型となります。覚田氏の起業は問題解決型に分類されますが、更に言えば、自分が受けた恩を次の世代に受け継ぐ、恩送り型であると主張します。
氏は、起業をすることは素晴らしい事であると何度も言います。人生が変わり、社会が変わり、世界が変わると主張すると同時に、苦しいことでもあります。起業をすると多くの苦しい問題が自分に対して降り掛かってくるため、それらに対する解決能力が高まり、ひいては身の回り、知人、家族、地域や日本を守る事が出来ると主張します。また、経営を修行と見立て、続けることにより自分のステージが変わる事を実感できると言います。
現在サラリーマンとして会社に勤めていながら起業を目論んでいる人には、今すぐできる事として、自分の会社の社長になった気持ちになって改革案をレポートにまとめることを勧めます。このレポートは今後社長になったときに必ず生きてきます。社長になると月に400時間は働かないといけません。現状の勤務時間からプラス200時間を何とか捻出し、サラリーマン起業家として新しい事業を立ち上げ、仲間を見つけることが重要だと言います。
一期一会から始まる起業と経営そしてコミュニティビジネス
株式会社クレスキューブCEOの杉森氏は、創業の心得として、信頼を得るために「自分の行動に責任を取る」「人の話に聞く耳を持つ」「決断力を持つ」「人一倍の努力をする」「情熱を持つ」「人を育てる」ことが重要であると言います。その道程には多くの茨の道がありますが、あえて選ぶことにより自分を成長させることになります。
起業するにあたっては、事業計画を整理し、プレゼンテーションする機会を多く経験します。事業計画には色々な項目が存在しますが、コーポレートブランドを明確にし、自分の会社を愛するようになる事が特に重要です。そして会社の事業内容を顧客や地域に対して明らかにし、同時に地域の活性化を図るためのまちづくりへの参画をして欲しいと氏は言います。
また、杉森氏は社会貢献を念頭に置いて事業計画を立ててほしいと強く願っています。企業の社会的責任(CSR)は時代とともに変化しています。CSR1.0では慈善事業の事を指し、CSR2.0では自分の事業を活用した事業を指してきましたが、現在のCSR3.0では提供している分の利益が得られることを考える必要があります。CSRを事業計画に絡めることにより、景気に左右されないような企業に成長させることが可能であると氏は語ります。
引き算する勇気
アビダルマ株式会社代表取締役社長の横田氏は、何かが無いと起業ができないのか?という命題に対して、起業というものに対して本質を考え、引き算をしていくことにより成功へ導く手法について話をしました。
横田氏は、日本からGoogleやAppleのような企業が生まれない理由の一つとしてデベロッパーマーケティングの考え方が浸透していないからだと指摘しています。デベロッパーマーケティングとは、新規のプラットフォームを普及させるための手法で、成長する前にプラットフォームの情報をエンジニア向けに提供し、利用してもらうよう働きかけるものです。氏は業務としてデベロッパーマーケティングの立ち上げを行いましたが、人手と時間が足りない中で必要な事項と不要な事項を厳選した結果、市場の活性化に繋がった経験があると語ります。
プロダクトを作る上で、機能の追加は難しくありません。しかし、不要な機能の厳選については大きな決断が必要になります。起業をするにあたってはその引き算が大きなカギを握ると氏は言います。引き算する時は対象の本質を考えなければなりません。必ずしもシンプルにするというだけでもありません。そしてその決断には自信と勇気が必要になります。本当に必要なものが分かれば、起業の成功につながることとなります。
また、勝ちパターンと負けパターンを経験しておくことも起業をする上で重要です。特に、上手な負けパターンについては予想外の信頼を得ることもあります。従って、小さい負けパターンを経験し、研究することが必要であると言います。
パネルディスカッション
産業技術大学院大学 特任准教授の亀井省吾氏をコーディネータとして、4名の登壇者がパネラーとなり、会場質問への回答を行いました。
覚田氏には、旅館のビジネス展開についてホームページによるマーケティング方法を指南して欲しいと質問がありました。それに対し、自身のコンサルティング経験から、ホームページには旅館の基本情報を載せるのではなく、感動を与える情報を載せることが必要であると言います。
岩田氏には、後発開発対策に関する特許の効能についての質問がありました。それに対して、特許はあまり有効な対策にはならないとし、それよりも開発のスピードを向上させ、イノベーションを起こし続けることのほうが対策になり得ると指摘します。後日、岩田氏はこの指摘について、「日本のスタートアップ企業では、特許の出願や取得により、資金調達時に企業価値(バリエーション)向上や、一定の担保として機能することがあり得る。しかし、現在のIT業界における後発開発への防衛対策という観点からは、特許を押さえさえすれば、後は安心ということは成り立たず、常にイノベーションを起こし続けていくことの重要性を伝えたかった」とコメントしています。
杉森氏には、CSRとCSV(共有価値の想像)との違いについての質問がありました。これに関してはボランティアや社会貢献を行うことがイメージ戦略として有効となり、企業価値が上がり永続的に発展できるとし、CSVはCSRの延長線上にあるだろうと話します。
ここで、「スタートアップ企業」と「永続的発展を目指す企業」は異なるものなのかという議題が上がりました。それに対して、横田氏は問題解決を目指すスタートアップ企業と、存続自体を目的とする企業とでポリシーが異なると言及します。杉森氏は、ポリシーとして永続的発展を望む企業もあるとし、自身が起業をした時はCSRをポリシーとして組み込んでいたことを語ります。覚田氏は、創業理念さえ永く伝われば、ベンチャー企業であるという強みが残り、時代に即した企業でいられると言います。また、一攫千金型スタートアップと問題解決型スタートアップは理念が異なるのでそこは注意が必要であるとも言及します。岩田氏は、スタートアップにしか無い強みがあるとし、永続的発展のためには理念をきっちりと伝えるよう話します。
資金調達の方法について質問がありましたが、横田氏は日々の仕事で稼いで、そこからスタートアップ事業を発展させていると答えます。覚田氏は、銀行はとても良い選択肢であり、活用することで素早い資金調達が出来るとし、岩田氏は、資金が足りなくなってから動くのは遅いため、余裕があるうちから資金調達を試してみることを勧めています。
最後に、学びから起業への発展について登壇者から話をいただきました。横田氏は、辛い時に折れないための何かを学びの中から得ることは可能であると答え、杉森氏は、同じような志をもつ人が集まっているので、そういう仲間と学べるというのは良い事であることと言いました。覚田氏は、アウトプットするまでが学びであるとして、今すぐにでも起業して学んだことを試していくべきであると話し、岩田氏は、現在の学校の授業で学ぶ機会が無い「英語」「自己表現」「ITの活用」「お金の仕組み」を積極的に学び、発信していくことがこれから重要であると総括しました。
総務省におけるICTの利活用推進に向けた施策の紹介
講演に合わせて、総務省関東総合通信局情報通信部情報通信連携推進課 課長の道祖土氏から総務省のICT利活用に向けた施策の紹介がありました。
総務省は研究開発の促進を図るため、基礎から実用化に至るまで切れ目のない研究開発支援を行っています。まず、優れた成果が得られるかどうかの実行可能性や実現可能性の検証フェーズ、可能性の検証がされた事項についての実用性の検証フェーズ、そして事業化に向けたビジネスモデルの実証フェーズの3つに分け、それぞれで支援を行って来ました。その内の実現可能性と実用性検証は、戦略的情報通信研究開発推進事業という形で競争的資金を提供していますが、これから起業される方に特に勧めたいのが、「重点領域型研究開発」「若手ICT研究者等育成型研究開発」「地域ICT振興型研究開発」の三点であると氏は言います。
また、IoTサービス創出支援事業について施策を行っています。これはIoTサービスの創出や展開にあたって克服すべき課題を特定し、その課題の解決に資する参照モデルを構築し、必要なルール整備などに繋げることを目的としており、全国各地の8チームで実施しています。
IoT人材育成の推進も合わせて行っています。アメリカと比べてユーザ企業においてICT技術者が不足しており、IoTによるビジネスのデジタル・トランスフォーメーションに対応できる人材育成が急務であると同時に、製品やサービスの付加価値の源泉が、ハードウェアからソフトウェアまたはサービス利用に移行することが予想され、必要となる人材のスキルが大きく変わっていくことが予想されます。そのために、IoT機器のユーザに求められる基本的な知識の要件を策定するとともに、民間事業者による技術検定や分野毎・地域毎の講習会等の周知啓発事業を実施する事を推進していると話します。
AIIT起業塾#9-アイデアソン―
尚、去る2017年2月5日には、アイデアソン形式の「AIIT起業塾 #9」が、産業技術大学院大学秋葉原サテライトキャンパスで行われました。
最初に、事例企業として、国内屈指の大規模サッカー練習場J-GREEN堺の管理・運営を担う株式会社ジャパンフットボールマーチャンダイズ代表取締役 藤縄雅敬氏より、運営の現状についての講演が為された後、課題が提示されました。藤縄氏は、「スポーツ施設運営における日本ならではのソフトサービスの東南アジア諸国輸出を成功させる」施策立案を参加者に提示しました。
次に、講師として招聘したイー・リゾート代表 釼持勝氏による「日本サービス業のアウトバウンド」に関するインプットセミナーの後、釼持氏のファシリテートの下で、参加者3〜4人がグループを形成し、合計4グループによるアイデアソンを実施しました。
各グループは、ツールとして提供されたクロスSWOTや独自のバランススコアカード教材を活用し、アイデアを戦略マップとして完成させていきます。そして、各グループからのプレゼンテーションを実施し、藤縄氏からの講評にて締めくくりました。藤縄氏は各グループの様々な提案に対し、「良いアイデアについては、今後の事業に生かしていきたい」と語っていました。
AIIT起業塾について
産業技術大学院大学が主催する「AIIT起業塾」は、広く一般の方々が参加できるオープンな勉強会です。IT・デザイン・マネジメントなどを活用し、様々な産業分野で新しい事業構築や問題解決をしている先駆者達が登壇し、講演します。また、自由なディスカッションする機会も設けられています。 Twitterの ハッシュタグ「#aiit_startup」では新しい情報だけでなく随時質問や要望を受け付けています。今後も引き続き開催予定ですので、ぜひご参加ください。
また、この「AIIT起業塾」は、文部科学省の「高度人材養成のための社会人学び直し大学院プログラム」に採択された産業技術大学院大学「次世代成長産業分野での事業開発・事業改革のための高度人材養成プログラム」の一環として開催されました。
(執筆:沖田慎平=産業技術大学院大学 修了生/慎祥揆=産業技術大学院大学 情報アーキテクチャ専攻 助教)
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産業技術大学について
(本記事は産業技術大学院大学提供のタイアップ記事です)
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