8月にリリースされたFirefox 55以降ではSelenium IDEが動作せず、Seleniumオフィシャルブログで報告。今後の方向性は?
8月9日にリリースされたFirefox 55ではSelenium IDEが動作しなくなっていることが、8月9日付けの「Official Selenium Blog」に投稿された記事「Firefox 55 and Selenium IDE」で報告されています。
Selenium IDEとは、ブラウザ自動化ツールSelenium関連のソフトウェアのひとつ。ブラウザの操作をコマンドとして記録することができ、それをテストケースとして再利用できるというツールです。Webアプリケーションのユーザーインターフェイス周りのテストなどで便利に使われてきました。
Firefox 55で動作しなくなった原因は、Firefoxの拡張機能の仕組みが従来の「XPI」から、Webブラウザの拡張機能としてW3Cで標準化されている「Web Extensions」へと切り替わったことにあります。Selenium IDEは、従来のXPIに依存して開発されていたのです。
Firefoxは以前からXPIからの脱却を宣言していたので、いずれにせよ近いうちにSelenium IDEは使えなくなる予定でしたが、それがこのFirefox 55から、ということが明確になったわけです。
下記はブログから、動作しなくなった理由の説明を引用します。
Firefox is switching extensions from the original “XPI” format, to a newer, more widely adopted “Web Extension” mechanism.
Firefoxは拡張機能を同ブラウザオリジナルのXPIフォーマットから、より新しく広く採用される“Web Extensions”機構へと切替えている
The Selenium project lacks someone with the time and energy to move the IDE forwards to take advantage of the new technologies.
SeleniumプロジェクトはSelenium IDEをこの新しい技術を活用するようなエネルギーを持った人材を欠いている
ブログでは2016年以降、Selenium IDEのメンテナンスは一人だけだったと指摘しています。
今後のSelenium IDEは?
Selenium IDEが再び動作するようになるには、XPIに依存していたSelenium IDEを作り替える必要があります。そうした開発の方向性について、ブログでは新しいWeb Extensionsに対応したものに作り替える方向性を示唆してはいます。
The second thing is that there is an effort to rebuild IDE using modern APIs, to be usable across more than just Firefox. The fine people at Applitools are helping with this effort.
二番目にやることとして、Selenium IDEをFirefoxだけでなくさまざまなWebブラウザに対応するよう、モダンなAPIで作り替える方向性がある。Applitoolsの聡明な方々がこうしたことを支援してくれている。
7月1日に東京で行われた「Selenium Committer Day 2017」でも、参加者から今後のSelenium IDE/Selenium Builderについての質問がありました。Seleniumのコミッタとして来日していたJim Evans氏は、やはりプロジェクトを支える人材がいないことに触れた上で「重要なツールであり、要望があることも分かってはいる。だがいまは次のタイミングがどうなるか、といったことは言えない」と、今後の具体的なアクションの予定は不明であると説明していました。
Selenium IDEはいくつもあるWebブラウザ自動化ツールであるSelenium関連のソフトウェアのひとつであり、Selenium自体は順調に進化を続けています。前述の国内イベント「Selenium Comitter Day 2017」でも100人以上の参加者が集まるなど注目度は高いままです。
そうしたなかで記録/再現ツールとしてのSelenium IDEは、残念ながら主なSeleniumの開発者からそれほどの人気がなく人材を集められていなかったようです。この人材不足を克服して新しいツールとして再開発がはじまるかどうかは、これから支援する人次第だといえそうです。
あわせて読みたい
Google、「Chrome Enterprise」発表。企業向けにChromebookでActive Directory、シングルサインオン、VMware Workspace ONE対応など
≪前の記事
シスコ、ハイパーコンバージド基盤ソフトを開発するSpringpath買収を発表。ハイパーコンバージドインフラへの注力強化へ