従来より2倍高速化をうたう「Firefox Quantum」正式版が公開。今後もさらに性能向上は続く
Mozillaが1年以上かけて高速化を目指してきた「Firefox Quantum」正式版がついにリリースされた。従来よりも2倍高速だとされているのに加え、UIも改善されている。ただし拡張機能が全面刷新され、従来のものは使えなくなった。
Mozillaは、過去1年以上取り組んできたWebブラウザの高速化技術である「Project Quantum」などを組み込んだFirefoxの最新版「Firefox Quantum」をリリース、ダウンロードが可能になりました。
FirefoxのバージョンとしてはFirefox 57となりますが、このバージョンからしばらく、来年登場予定のFirefox 61もしくは62までは「Project Quantum」の名称をつけた「Firefox Quantum」と呼ばれることになります。つまり今回のバージョンは「Firefox Quantum」の第一弾といえます。
Firefoxを高速化するProject Quantum
MozillaがFirefoxの動作を劇的に高速化する「Project Quantum」に取り組むことを明らかにしたのは、1年以上前の2016年10月です。
Mozillaが開発を推進しているRust言語による新型の高速ブラウザエンジン「Servo」の技術などをFirefoxに取り入れ、マルチコアプロセッサに対応した並列処理やGPUを積極的に活用することで高速化を実現しようとしていました。
Project Quantumは実際にはサブプロジェクトとして、CSS関連の「Quantum CSS」(別名「Stylo」)、レンダリングエンジン関連の「Quantum Render」、GPU関連の「Quantum Compositor」、DOM関連の「Quantum DOM」、ユーザーインターフェイス関連など上記でカバーされない領域を対象とする「Quantum Flow」などがあります。
また、11月1日に日本でFirefox Quantumの説明を行ったジェフ・グリフィス氏によるとQuantum FlowにはFirefoxのJavaScriptエンジンであるSpiderMonkeyの高速化に関連する改善も数多く含まれているため、JavaScriptの実行速度の向上も行われるとのことです。
Mozillaによると、今回リリースされるFirefox Quantumはベンチマーク「Speedmeter 2.0」で、Firefox 52と比べて2倍以上高速になったという結果をたたき出したことが明らかにされており、またChromeよりも使用メモリが30%少ないと説明されています。
Firefox Quantumは、まだQuantum Projectのすべての実装が終わっているわけではありません。Firefox Quantumの呼称が続くあいだ強化が進められ、高速化などの性能改善が続くとされています。
ルック&フィールの改善、拡張機能の刷新も
Firefox Quantumはそのほかにも大きな変更がいくつか加えられています。
1つはルック&フィールの改善です。新しく「Photon UI」と呼ばれる画面上の無駄などを極力なくしたユーザーインターフェイスに変更されました。目立ったところでは、タブの縁が四角くなり、Webページのコンテンツを保存するPocketボタンが統合、戻るボタンなどのナビゲーション系は左側にまとめられています。
既存ユーザーにもっとも影響するのが拡張機能の変更でしょう。Firefox Quantumからは従来のFirefoxのアドオンは使えなくなり、現在W3Cで策定中のWebExtensionsベースの拡張機能へと刷新されます。既存のFirefoxユーザーは、Firefox Quantumに移行した時点であらたにどの拡張機能が利用可能なのか確認する必要に迫られるでしょう。
Android版FirefoxもProject Quantumで高速に
Mozillaのジェフ・グリフィス氏は、モバイル版FirefoxへもProject Quantumの適用を検討していることを明らかにしています。
すでにAndroid版でもQuantumの効果が見込めるのかMozilla社内で評価し、効果があることが分かったとのこと。そこでFirefox 58のAndroid版では、Rust対応のレンダリングエンジンやCSSエンジンなどの投入に向けて評価を続けているとのことです。
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