2020年末までに、日本のIT人材は質的に30万人以上の不足に陥る。IT部門の10%が組織の「一員」としてロボットやスマートマシンを採用する。ガートナージャパンの予測

2017年1月24日

ガートナージャパンは、ITサービスプロバイダーの技術者もしくはユーザー企業の情報システム担当者などのIT人材に関する2017年以降の展望を発表しました

同社が発表した展望は次の4つです。

展望1 2020年末までに、日本のIT人材は質的に30万人以上の不足に陥る

展望2 2020年までに、日本のIT部門の10%が、IT組織の「一員」としてロボットやスマートマシンを採用する

展望3 2020年までに、オフショアリングを実施する日本のIT部門の50%が、コスト削減ではなく人材確保を目的とする

展望4 2020年までに、非IT部門が単独で進めるITプロジェクト(開発・運用・保守)の80%以上が、結局はIT部門の支援・助力を求めざるを得なくなる

展望1:IT人材の不足。人材需要が増加する一方、スキル転換は容易でない

「多様な産業でデジタル化が進展する結果、IT人材をめぐる熾烈な競争が生まれる」とガートナーは指摘しており、 それが展望1の「2020年末までに、日本のIT人材は質的に30万人以上の不足に陥る」につながっています。

同社が2016年12月に日本国内で実施した調査では、「IT人材が不足している」と回答した企業は全体の83.0%。さらに全体の20.4%では、少なくとも現状の1.5倍の人数が必要であると考えていることが判明しています。

今後は、デジタル技術を用いた新分野での人材需要が増加する一方で、既存のIT人材のスキル転換は容易ではないため、ミスマッチに起因する質的な人材不足が顕在化すると同社は予測しています。

展望2:IT組織にロボットやスマートマシンが入ってくる

展望1で見たような、深刻な人材不足の問題とデジタル化への取り組みが背景となり、IT部門がIT組織設計の見直しが迫られるなかで、ロボットやスマートマシンをIT組織の「一員」として採用する企業が徐々に増加すると、ガートナーは予測しています。

ロボットやスマートマシンの採用は、代替対象となる定常業務に従事している技術者にとっては脅威となり得ますが、IT人材市場においては同時に、既存システムとの連携やソリューションの調整など新しいスキルの需要が増加。また、技術者の育成にもポジティブな効果が予想されるとガートナーは見ています。

「優秀な技術者のノウハウや行動特性をソリューションによって再現することが可能になれば、IT人材の健全な育成を阻んできた構造的な障害を排除することも可能になります」(ガートナーの発表から)

展望3:オフショアリングの半分は、コスト削減ではなく人材確保に

ガートナーは、日本国内におけるシステム開発需要が急増した結果、国内でのIT人材調達が困難になったIT部門の一部が、オフショアリングによる人材調達に本腰を入れて取り組み始めていると指摘。

特に企業の認知度が低いなど、人材市場へのアピール力に欠けるIT部門や、グローバルにIT拠点を保有し、日本向けタスクもグローバル拠点に集約可能なIT部門を中心に、人材獲得を目的としたオフショアリングの活用が進んでいるとしました。

展望4:非IT部門のITプロジェクトの多くが、結局IT部門の支援を求める

2016年にガートナーが日本企業のIT部門を対象に実施したアンケート調査では、IT部門を介さずにデジタルビジネスを推進している企業は既に3割を超えているとのこと。この傾向は今後も増えると予想されます。

一方、ガートナージャパンのリサーチ部門マネージング バイス プレジデントの山野井聡氏は、この状況は危うさも抱えていると次のように指摘しています。

「CIOやIT部門が懸念するとおり、非IT部門が単独で進めるITプロジェクトはさまざまなリスクをはらんでいます。一般に、非IT部門はITプロジェクト管理の経験に乏しいことに加え、ITセキュリティの観点から、専門的立場による監視・指導が必須となります。また、IT部門が確固たる安定したアーキテクチャやデータ基盤を提供してこそ、その上でさまざまなデジタル・ビジネスにチャレンジできるのです。IT部門は、非IT部門との相互信頼を高めながら、デジタル・ビジネス関連プロジェクトにも早期から主体的に関与すべきでしょう」

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Junichi Niino(jniino)
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