米クラウドベンダのRackspaceが投資会社へ身売りした理由をCEOが語る
10日ほど前のことになりますが、米クラウドベンダの1つであるRackspaceが、投資会社Apollo Global Managementに43億ドルで買収されることが発表されました。
RackspaceはNASAと共同でOpenStackのプロジェクトを立ち上げるなど、クラウド業界のなかでも存在感のある企業の1つでした。
一方で同社はクラウド市場での生き残りを賭けて数年前から戦略を模索しつつ身売り先を探していたことも分かっており、2014年にはクラウドの低価格競争から脱するためにマネージドクラウドサービスへ注力することを発表。
そして2014年9月にはいったん身売り先に関する交渉をすべて打ち切り、単独で生き残りを賭けて市場で戦うことを選択しています。
しかし2016年8月26日、投資会社Apollo Global Managementに43億ドル(約4300億円)で買収されることを発表。同社はニューヨーク証券取引所に株式を公開する上場企業でしたが、買収によって非公開企業になります。
自社の位置づけや戦略の再定義
なぜRackspaceは投資会社への身売りを決めたのでしょうか? 同社CEO Taylor Rhodes氏がブログに投稿した記事「Why Rackspace is Becoming a Private Company」で主な理由が語られています。
最初の理由として書かれているのは、投資会社であるApolloがRackspaceの将来性を評価しているということ。これは買収してくれる企業への社交辞令と言えるもので、重要なコメントではないでしょう。
Apollo understands that we face a big opportunity today as mainstream companies move their computing out of corporate data centers and into multi-cloud models. It knows that our customers highly value our expertise, technology and service, and that more potential customers would use us if they knew of our capabilities.
Apploは私たちが直面している大きなビジネス機会、それは多くの企業がオンプレミスのデータセンターからマルチクラウドへ移行するということを理解してくれている。
多くの企業がマルチクラウドへ移行するという認識も一般的なものと言えます。
2つ目の理由は、非公開会社になることで経営のフレキシビリティを見込めるというもの。
We expect that this transaction will give us more flexibility to manage our business for long-term growth.
今回の買収によって長期的な成長に向かって経営のフレキシビリティを得ることができるだろう。
これで思い出すのは、デルが非公開を選んだのと同じ理由だと言うことですね。そのフレキシビリティを得た経営によって、どのような方向を目指すのかは次のように書かれています。
We’ve been reallocating the resources from those sales into new lines of business such as our services for customers who use AWS and the Microsoft Cloud — services that, while relatively small, are growing rapidly.
私たちは社内のリソースを新しいビジネス、それはAWSやマイクロソフトのクラウドを利用している顧客向けのサービスへと再配置してきました。それはまだ比較的小規模ですが、急速に成長しています。
また大企業と中堅のプライベートクラウド向けにOpenStackを重視していくとも書いています。
We’ve been pivoting OpenStack to become the leading technology in the enterprise and mid-market private cloud space.
Amazonやマイクロソフトなどのハイパースケールなクラウドを展開する企業と正面から戦うのではなく、彼らの顧客を支援するビジネスを、自社の強みでもあるOpenStackを用いて行っていくという方向性です。こうした自社の位置づけや戦略の再定義をするために、非公開企業になるという選択をした、というのが全体の文脈のようです。
As a private company, we expect that we will have the flexibility to strike more quickly and deeply on these fronts; to better serve our customers and capitalize on our early leadership of the managed cloud industry.
非公開企業として、顧客や投資家のためにマネージドクラウド事業におけるリーダーシップを早期に確立し、より迅速かつ深く先頭に立つためのフレキシビリティを期待できるでしょう。
買収した投資会社としては、いずれかの時点、おそらく数年後にはRackspaceをどこかの企業に売却するか、もしくは再上場させることになるはずです。果たして、そのときにRackspaceはどのような姿になっているのでしょうか。
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