Google対OracleのJava API訴訟。歴史的経緯とIT業界への影響を考える(その4)。JJUGナイトセミナー
2016年5月、GoogleとOracleがJava APIを巡って争っていた裁判に最初の陪審員による評決がくだりました。結果は、GoogleがJava APIをAndroidに流用したことはフェアユースにあたる、というものです。
この評決にはどのような背景があり、IT業界にどんな影響を与えるものなのか。このことをテーマに2016年7月に行われた日本Javaユーザーグループ主催の「JJUGセミナー」の内容を紹介しましょう。
記事は全部で4本(その1、その2、その3、その4)。いまお読みの記事は「その4」です。
裁判におけるGoogleとOracleの主張
フェアユースに関して説明したので、OracleとGoogleの裁判において、それぞれどういう言い分があったのか見ていきましょう。
これは海外の記事などからの情報を中心にまとめたものです。Oracleの言い分は、Googleはオラクルの知的資産を盗んで、Androidから420億ドルもの広告料収益を受けていると、フェアユースどころではない大きなビジネスをしていると。
また、フェアユースは本来、報道、教育、研究などに適用されるもので、完全にその範囲を超えていると。そしてGoogleは、とにかくスマホ市場での遅れを取り戻すためにJava APIを流用した、これはアンフェアだろうと。
まあ、これらの言い分はわからなくもない。僕がOracleの人だったら、たぶんこういうでしょうね。
一方、Googleの言い分は、ソースコードの流用は問題だけど、APIを再利用して互換プラットフォームを作ることは昔からソフトウェア産業で行われてきたことでしょう。それによってソフトウェア産業は発達してきたでしょうと。
APIが著作権で保護されるなんてことがまかりとおってきたならば、ソフトウェア産業でイノベーションなんてありえないと。
Javaは最初からフリーでオープンなものとして構築され、これによって産業と社会は大きな恩恵を受けたと。そしてOracleはライセンス収益を求めているだけじゃないかと。
このときの証人には元サン・マイクロシステムズCEOのジョナサン・シュワルツが立ったという話があって、ある記者さんは、この人の登場が裁判の潮目を変えたと。それまでOracle有利だった流れがGoogleへと逆転したと書いていました。
そしてこうした両社の言い分を聞いて陪審員が出した結論は、「GoogleによるJava APIの流用は、フェアユースである」という結論でした。
Oracleは控訴する予定なので、控訴審でひっくりかえる可能性もあるかもしれません。
APIの流用はフェアユース?
議論を整理してみると、Googleの意見に近い立場では、APIを流用してコピーするのはフェアユースだよと。あるいは互換プラットフォーム構築を目的とする限り、APIの流用はフェアユースだよ、という考え方です。
ただ、今回のケースでは互換プラットフォームを作ろうとしたかは、ちょっとあいまいな点があるかもしれません。
私はどちらかというと真ん中の意見に近いですかね。
互換プラットフォーム開発、要するにクリーンルーム的な開発、開発者はオリジナルのコードは見ずに、APIというかドキュメントを参照して独自にコードを書きます。
こういうことができないとなると、いままでソフトウェア産業で起きてきたこと、例えばIBM PCの互換BIOSの開発まで否定されてしまうので、互換プラットフォームを作るという目的であれば、APIの流用はフェアユースにするべきだと考えています。
また、コンピュータプログラムの著作権侵害は、ソースコードの大量デッドコピーに限定すべきじゃないかとも思います。
なぜかというと、あまりにもコードの保護を強めてしまうと、結局アイデアそのものを保護することにつながってしまい、著作権法の範囲を超えるのではないかと。
ソフトウェアのSSOまで著作権法で保護すると、それはアイデアに限りなく近いということもありますし、ほかの工業製品とのバランスもとれない
例えば、自動車会社がライバルメーカーの車を買ってきて分解し、エンジンがどうなっているのか、などを参考して自社製品を作るのは、特許を別にすれば許されているわけです。それがソフトウェアに限って許されないのはバランスを欠くのかなと思います。
特に互換プラットフォームを目的としたAPIの利用は、絶対に制限されるべきではないですね。ただ今回のケースでは互換プラットフォームの開発を目的としたわけではなく、かえってJavaを分断してしまっているので、ちょっと違うと考えてはいますが。
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