半導体ベンダーのブロードコムがブロケードの買収を発表。ただし欲しいのはFC SAN事業だけ、イーサネット事業は買収後すぐに手放すと
通信機器関連の半導体ソリューションベンダー大手ブロードコムは、ストレージエリアネットワークやイーサネットスイッチ製品などを提供するブロケードコミュニケーションズシステムズの買収を発表しました。
ブロードコムは、サーバやストレージ、ネットワーク機器、スマートフォンなどさまざまな機器向けにネットワーク用の半導体チップなどを提供する大手ベンダとして知られています。
一方のブロケードは、ファイバーチャネルスイッチによるストレージエリアネットワーク製品群(FC SAN)の最大手として知られており、また2008年にFoundry Networksの買収などを通じてイーサネットスイッチ関連製品も展開するようになりました。さらに2012年にはVyattaを買収したことでネットワークソフトウェア事業へ進出、今年2016年4月にはRuckus Wireless買収により無線LAN関連の事業にも手を伸ばしています。
買収によってブロードコムに欠けていたFC SAN製品群を補完
ブロードコムの買収の意図は以下の図に示されているように、データセンターにおける同社の製品展開に欠けていたFC SAN製品群を埋めることにあります。
ブロードコムは基本的にエンドユーザー向け製品を展開していません。同社の半導体製品はDellやHP、IBM、シスコ、富士通、NetAppなどのさまざまなサーバベンダ、ネットワーク機器ベンダ、ストレージベンダの製品の一部として組み込まれ、あるいはOEMとして扱われてエンドユーザーに届けられるのです。
この製品群に、上記の図の中央に示されたブロケードのFC SAN製品群が加わることで、データセンターのネットワーク全体をカバーする同社製品群のポートフォリオができあがるわけです。
ブロードコムの会長兼CEOのHock Tan氏は、いまクラウドのデータセンターにおけるトレンドは、イーサネットでストレージネットワークを構成することであり、同社製品はこのトレンドによって成長を続けていると説明。
一方で大企業やヘルスケア関連企業、キャリア、政府などにおいてはオンプレミスで高度なストレージ基盤を構築するニーズが依然として存在し、ここではFC SAN以外に代替手段はないためにFC SAN事業は堅実なものだと考えていることを明かしました。
既存の顧客と競合するブロケードのスイッチや無線LAN製品群は手放す
こうしてブロードコムはブロケードのFC SAN事業を取り込む一方、Hock Tan氏はブロケードのIPネットワーキング事業、すなわちイーサネットスイッチや無線LAN事業など(おそらくVyattaも)買収完了後にすぐ手放すと、プレス向けの電話会議で次のように説明しました。
「We divest IP networking business which compete with our OEM customers」(私たちのOEM顧客と競合するようなIPネットワーキングビジネスは手放す)
ブロードコムは既存の顧客であるサーバベンダ、ネットワーク機器ベンダを戦略的パートナーと見なしており、その顧客の製品と競合するようなブロケードのイーサネットスイッチやネットワークソフトウェア、無線LAN製品などは放棄することを明確にしているわけです。
ブロードコムはブロケードの買収完了後、即座にこれらの事業を手放すとしています。ただし、どうやって手放すのか、譲渡相手がいるのか、などについてはいまのところ見通しはたっていないようです。
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