Docker EngineのメンテナにNTT須田氏が就任。「Dockerの品質の維持・向上を中心に取り組んでいく」
オープンソースで開発されているDocker Engineのメンテナに、NTTの須田瑛大(すだ あきひろ)氏が11月1日付けで就任しました。
いまもっとも注目されているオープンソースソフトウェア(OSS)の1つであるDockerの開発に関わるようになった須田氏に、メンテナに就任するまでの経緯や、今後どのような方向での貢献を考えているのか、メールでインタビューをしました。
日本人として初めてDockerメンテナに就任
──── 須田さんはどのような実績や経緯でDockerメンテナに就任されたのでしょうか。また、Dockerメンテナ就任は日本人としては初めてでしょうか。
須田氏 日頃よりパッチ投稿、他の開発者のパッチに対するコメント、問題解析などを実施していたところ、Docker社よりメンテナのお誘いをいただきました。日本人・日本企業としては初となります。
もともと分散システムのテスト技術に関する研究開発のためDockerを利用していたのですが、その過程で偶然にストレージ関連の問題に突き当たり、解析を担当したことがDockerコミュニティとの関わりの契機となりました。昨年12月頃の話です。
その後、4月頃より安定性・互換性・セキュリティに関するものを中心に、継続的にパッチを投稿してきました。
──── Dockerメンテナとは、そもそのどのような役割や立場なのか、教えてください。
須田氏 メンテナは、Docker本体(Docker Engine)、Swarmkit、Infrakitなどのリポジトリ毎に任命されます。また、各リポジトリのメンテナ毎に「コアメンテナ」「ドキュメントメンテナ」などの役割が存在しています。
私は、Docker本体(Docker Engine)のコアメンテナに就任しました。
現時点でのコアメンテナの人数は26名で、内訳はDocker社員が18名、IBMが3名、Huawei、InfoSiftr、Microsoft、、Red Hat、NTT(須田)が各1名です(参考:メンテナのリスト)。
メンテナの主な権限・責任はパッチのレビューおよび採否の決定です。パッチは2人以上のメンテナが承認したもののみが採用されます。また、他のメンテナの任免に関する選挙権も持っています。
メンテナ活動は会社の業務の一環として。品質・向上を中心に取り組み
──── 須田さんは所属している会社の業務の一環としてメンテナの活動をされるのでしょうか。それとも個人として活動されるのでしょうか。オープンソースと業務の関係について、可能な範囲で教えてください。
須田氏 業務の一環です。私が属するNTT ソフトウェアイノベーションセンタは、高度化および品質向上を目的としてDockerやOpenStackなどさまざまなOSSについてコミュニティ連動開発を実施しています。
──── メンテナとして今後の抱負や計画などがあれば教えてください
須田氏 OSSを商用導入するには、その品質が大きな課題となります。Dockerの品質の維持・向上を中心に取り組んでいくつもりです。そのために新たなテスト手法の導入など、色々な工夫を計画しています。
そのほか機能面や性能面でも、ユーザー目線に立って活動していこうと思っています。
複数のコンテナからなるサービスを簡単にデプロイ可能に
──── 須田さん自身が考えるDockerに対する魅力や可能性とはどういうものでしょうか。
須田氏 スケーラブルなサービスを、シンプルに構築できることが魅力です。
Dockerの今後の可能性としては「バンドル(複数イメージの集合体)」および「スタック(複数コンテナの集合体)」の管理に注目しています。
「バンドル」/「スタック」を活用することにより、複数の異なるコンテナからなるサービスを簡単にデプロイすることができます。
今後はバンドル/スタックの利便化のため、さまざまな取り組みがなされていくでしょう。例えば、Docker Composeの設定ファイル(docker-compose.yml
)を直接バンドルとして用いるための機能などが実装されつつあります。
──── 最後に自由にコメントをお願いします。
須田氏 近々、Docker 1.13がリリースされます。1.12で導入されたSwarmモードに関して高可用スケジューラの追加や、秘密ファイル管理機能の追加など、大幅な改善がなされる予定です。
その他、CRIUを用いたチェックポイント機能やSolarisサポートなども予定されています。
既に一部の機能はmaster版バイナリで試すことができます。この記事をお読みの皆様も、ぜひお試しください。バグ報告もお待ちしております。
──── ありがとうございました。
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