ブログでメシが食えるか? Publickeyの2016年

2016年12月26日

毎年こうして年末にPublickeyの売り上げを報告している理由はおもに2つあります。

1つは、個人が運用するブログで、しかもエンタープライズITの分野にフォーカスするという、小規模かつ専門性の高いメディアが十分に売り上げを立てていくことができるのかどうか、興味を持つ人たちに、その現実をリアルタイムに紹介したいと思っているからです。

そしてもう1つは、この個人で運営されている小さなメディアが健全に運営されていることを示すことそのものが、メディア運営ビジネスに有利に働くと考えているからです。

小規模メディアとしてのPublickeyの特長は、AdSenseやアフィリエイト広告に依存せず、バナー広告やタイアップ広告を直接販売して売り上げを上げていることです。専門性の高いオンラインメディアでは必然的に読者数が絞られることになるため、クリック数に売り上げが連動するAdSenseやアフィリエイト広告では十分な売り上げがあがらないためです。

一方で、メディアの専門性がきちんと評価されれば、広告の価格をある程度高い水準に保てるはずです。現在、Publickeyではバナーを1カ月30万円、タイアップ広告を1本25万円で販売しています。

広告を販売するための媒体資料の作成、お客様とのやりとり、バナー広告のアドサーバへの入稿、タイアップ広告の取材、執筆、公開、そして広告掲載後のお客様への掲載レポートの提出まで、基本的にすべて1人でやっています。

こうして2009年にはじめたPublickeyのメディアビジネスがこの1年どうだったのか。今年も紹介しましょう。

2016年のPublickeyの売り上げ報告

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今年もPublickeyのページビューはおおむね月間40万ページビュー前後で推移しました。このページビューをどうやって伸ばしていくのか、毎年課題にしていますがなかなかいい答えが見つけられずにいます。

続いて売り上げです。

2016年1月から12月までの1年間のPublickeyの売り上げは1632万8201円でした。内訳は、バナー広告や記事提供などが1071万5490円、タイアップ記事が544万500円、AdSenseやAmazonアソシエイトなどが17万2211円でした。

この場を借りて、年間を通じて広告をご出稿いただいたグレープシティ様、アドバンスソフトウェア様をはじめ、Amazon Web Services様、日本マイクロソフト様、日本IBM様、IDCフロンティア様、エクセルソフト様、レノボジャパン様、東京エレクトロンデバイス様、EMCジャパン様、シスコシステムズ様、マクニカネットワークス様、ミラクル・リナックス様、産業技術大学院大学様ほか(順不同)、ご出稿いただいた皆様、扱っていただいた代理店様に厚くお礼申し上げます。

そしてなにより、Publickeyを今年もご愛読いただいた読者の皆様にお礼申し上げます。

今年は特にバナー広告が大きく売り上げを伸ばしました。これは、昨年よりさらにPublickeyのメディアとしての認知が進み、バナー広告の引き合いが増えたためです。例えばこの記事の周囲に表示されているバナー広告を見ていただくと、上にはマイクロソフト様、右にはマイクロソフト様とグーグル様、下にはAmazon Web Servcies様のバナーが掲載されています(2016年12月時点)。

クラウドの主要ベンダから揃ってバナーをいただけたということは、クラウド関係で広告を出すメディアとしてPubilckeyが十分に認知された証だろうと思っています。

Publickeyでは、こちらからお客様にアプローチするような営業活動をしていません。すべての発注は、まずお客様から問い合わせをいただくところから始まっています。ですから営業もせず、地道に専門分野にフォーカスしたブログを書き続けて、ちゃんと読者を獲得することでここまでバナー広告の売り上げを伸ばせたというのは、そうでありたいと考えていたことではありますが、出来過ぎと言っていいほど幸いなことです。

昨年、Publickeyの売り上げが1000万円を超えたとき、さすがに売り上げとしてはここがピークだろうなと思っていました。もともとPublickeyは毎年売り上げを成長させようとか、これくらい売り上げたいといった目標も設定していないので、まさか今年さらに売り上げが伸びるとは思わず(伸ばそうとも思っていませんでしたし)、自分でも驚いています。でももう今年が売り上げのピークではないかと思いますので、来年はあんまり期待しないでください:-)

個人事業主としての売り上げ

個人事業主としては、Publickeyからの売り上げのほかに、イベントでの講演やモデレータ、原稿を執筆することなどによる売り上げがあります。2016年のこれらの売り上げはほぼ例年通りでした。Publickeyとこれらの売り上げを合計した個人事業主としてのトータルの売り上げは、2000万円を大きく超える金額となりました。

ブログでメシが食えるか?

というわけで、おかげさまで今年もブログでメシが食えたと胸を張って言えると思います。

そして毎年書いていることですが、僕が夢見ているのはPublickey単体の成功だけでなく、Publickeyのように小さな専門メディアがたくさんでてきてくれることで世の中のメディアの多様化が進むことです。

今年はステマ騒動や、いわゆるキュレーションメディアによるいいかげんな記事や他人の記事の盗用騒動など、問題を抱えるメディアが世間を騒がせました。幸運にもPublickeyが示せたように、小さなメディアであっても専門性にフォーカスして地道に継続すれば、ステマに荷担したり他人の記事を盗んだりしなくても十分な売り上げは上がるのだ、という事例がもっと増えればと思います。

ただ、もちろんそれは簡単なことではありませんから、誰にでもできるなんて軽々しいことは言いません。僕は、すでにメディア事業を経験して十分に能力と経験を身につけたベテランの人にこそ、その能力を担保にリスクを取って飛び出して、健全なメディアの多様化に貢献してもらいたいなと思っています。

FAQ:よくある質問と答え

はてなブックマークなどのコメントでよくいただく質問について、答えをFAQとしてまとめてみました。

Q. 営業力がすごいから広告が売れたのでは?

例えば見込みのありそうなお客様や代理店に、こちらから「広告いかがですか?」とアプローチするような営業活動はまったくしていません。営業的なアクションはすべてメールなどでお問い合わせをいただくところから始まります。お問い合わせに対してメールや電話で対応し、場合によってはお伺いして説明し、ご発注いただいています。

ですから、なんかこう素晴らしい営業力があって売り上げが上がっている、というわけではありません。毎日記事を書いて、読者から反応があって、問い合わせがあったお客様から最終的にバナーやタイアップの発注をいただき、結果をレポートする、ということの繰り返しです。

もちろん、適切な価格を設定する、問い合わせや依頼には適切に対応する、万が一なにかトラブルがあったら真摯に対応するといった、広い意味での営業活動はきちんとするように心がけていますし、こうした対応にも実は営業力というのは求められるわけで、簡単にできることではありません。僕は新入社員のときに2年間ソフトウェアの営業をしていて、いまでもその経験が役に立っています。

ちなみに、お問い合わせは広告代理店からが圧倒的に多く、次いで企業のマーケティング担当の方からとなっています。いずれにせよお問い合わせの段階ですでにPublickeyへの広告出稿を具体的に検討いただいていおり、質問の内容のほとんどは空き枠の状況や代理店マージン、広告の入稿ルールなどについてです。

Q. 人脈がすごいから広告が売れたのでは?

前述のように、こちらからアプローチをする営業活動はしていないので、営業活動のなかで人脈を活用する場面はほとんどありません。また、ふだんの取材活動で得られる人脈と、企業内で広告予算を握っている方々とは、それほど重なっていないようにも思います(社外からは、どの方が広告予算を握っているのかはよく分かりませんし)。

取材活動のなかで広告営業をしたり、取材で得た人脈を通じて広告営業をする、ということもしていません(こちらからアプローチする営業はしていないので、自動的にそうなるわけですが)。もちろんそうした方々かPublickeyへの広告出稿に興味を持っていただいてお問い合わせいただいた際には、丁寧に対応しています。

Q. 経費はどれくらいかかっているの?

ブログに記事を執筆して記事を公開するのにかかる経費は、ご想像の通りほとんどありません。レンタルサーバが年に2万円くらい、交通費が毎月1万円くらい。これにパソコンを新しく買ったり、雑誌や書籍を買ったりするお金がかかるくらいでしょうか。もちろん確定申告では、家賃や電気代や通信費の一部などを経費として計上しています。

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Junichi Niino(jniino)
IT系の雑誌編集者、オンラインメディア発行人を経て独立。2009年にPublickeyを開始しました。
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