2017年にブレークするインフラ技術は「サーバーレスアーキテクチャー」「カンバセーショナルUI」「ストレージクラスメモリー」。ITインフラAWARD 2017
エンタープライズの分野で、2017年にブレークする、すなわち急速に注目度が上昇するであろうインフラ技術を選出する「ITインフラAWARD 2017」の結果を日経BP社が発表しました。
このアワードが開始された3年前から、僕は審査員として識者の方々の末席に名を連ねておりまして、審査会では毎年とても刺激的で勉強になる議論に参加させてもらっています。
今年のアワードの結果は記事タイトルですでに明かしていますが、グランプリが「サーバレスアーキテクチャ」、2位は「カンバセーショナルUI」、そして3位は「ストレージクラスメモリー」でした。
僕を含む審査委員がどのような議論を経てこの結果に至ったかは、おそらくもう少し詳しい記事が別途オンラインのITProもしくは雑誌の日経システムズに掲載されると思いますので、この記事では審査会で議論する前に、僕自身が考えていた順位について紹介しようと思います。
2017年度にエンタープライズ分野でブレークしそうな技術を、僕は次の3つだと考えていました。
グランプリ「サーバーレスアーキテクチャ」もしくは「サーバレスコンピューティング」
2位「Bot/インテリジェントBot」
3位「ラックスケールアーキテクチャ」
サーバレスアーキテクチャをグランプリに選んだ理由は2つ。1つは、これまでインフラ技術として進化してきたインフラ技術の大きな潮流として、仮想化からコンテナへ、という変化があり、そのコンテナ技術がアプリケーションの構成に大きな変化を与えるものとして具体的に見えてきたのが「サーバレスコンピューティング」だということ。
そしてもう1つは、このサーバレスコンピューティングを使うことで、クラウドにおいてインフラコストや運用コストがさらに大きく下がるだろうということです。クラウドはインスタンスの時間課金によって「初期費用は不要。使った分だけ払う」という実質的なコストダウンを実現しましたが、サーバレスコンピューティングは「アプリが起動したときだけ払う」という形で利用時間をさらに細分化し、ふたたび大きなコストダウンを実現しようとしています。
この2つの要素はエンタープライズの領域で来年大きく注目されるのではないか、というのが僕の予想です。
2位の「Bot/インテリジェントBot」は、本アワードの2位になった「カンバセーショナルUI」と同じ意味です。テキストチャットによるユーザーインターフェイスはLineやSlackの登場で急速に普及し、音声によるユーザーインターフェイスもSiriやGoogle、Amazonなどがサービスを開始しました。
この分野のエンタープライズでの利用は、マイクロソフトもオラクルもセールスフォース・ドットコムも取り組みを発表しています。インテリジェントなBotoなどとの組み合わせにより、エンタープライズの世界でも来年には注目されることになるはずです。
3位のラックスケールアーキテクチャは、ムーアの法則がだんだん成立しなくなって単体でのプロセッサの能力の大きな向上が見込めなくなってきた時代に、たくさんのプロセッサとたくさんのメモリとを高速かつ柔軟に接続することで、重い処理にはたくさんのプロセッサを一時的に投入したり、大規模なデータには大規模なメモリをすぐに割り当てられるような、柔軟かつ高性能なサーバを実現しようというアーキテクチャです。
来年、こうしたアーキテクチャのサーバが登場して売れ始める、ということにはならないと思いますが、どのサーバベンダもこうした方向に向かっており、来年には具体性が高まってくるのではないかなと思っています。
このランキングは審査員で議論する前に僕が考えていたことなのですが、結果的にはほぼ本アワードの結果と合致したため、自分の予想は識者の皆さんが考えていたこととそれほど大きく外れていなかったんだなと胸をなでおろしたところです。
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