ホワイトボックススイッチとは何か? オープン化がすすむネットワーク機器のハードとソフトの動向(前編)。ホワイトボックススイッチユーザ会 第一回勉強会
「エンタープライズ向けスイッチの出荷量は落ちていって、大規模データセンター向けのスイッチが市場でドミナントになる」こうした予測と共に注目を浴びている新しいネットワーク機器が、ホワイトボックススイッチです。
ホワイトボックススイッチとはどのようなもの何か、どのようなハードウェアとソフトウェアがあり、どう使われていくものなのでしょうか。
5月13日に行われた「ホワイトボックススイッチユーザ会 第一回勉強会」で、NTTソフトウェアイノベーションセンタの石田渉氏が行ったセッション「ホワイトボックススイッチの北米利用動向」の内容を紹介します。
ホワイトボックススイッチとは何か?
NTTソフトウェアイノベーションセンタの石田です。
今回はホワイトボックススイッチ勉強会の第1回ということもあり、ホワイトボックススイッチとは何か、またホワイトボックススイッチは北米などで利用が始まっているので、その動向を紹介したいと思います。
ホワイトボックススイッチのソフトウェアのオープン化が進んでいるので、その主要コンポーネントについても簡単に紹介します。
ホワイトボックススイッチとは、ソフトウェアを含まないODM(Original Design Manufacture、OEMは発注元が製品開発や設計などを行うのに対し、ODMは受注者が製品開発や設計などを行う。台湾や中国などの企業に多く見られる)ベンダ製のネットワークスイッチです。
従来のスイッチは、ソフトウェアとハードウェアが統合されて販売されており、ソフトウェアはクローズドで、ユーザーが勝手に機能追加などを行うことは困難でした。
それに対してホワイトボックススイッチは、OSを含むソフトウェアをユーザーが選択、あるいは開発できます。ですので機能追加は比較的容易にできます。ハードウェアは、スイッチを従来製造してきた台湾のベンダ製がほとんどです。
ホワイトボックススイッチ登場の背景
ホワイトボックススイッチはGoogle、Amazon、Microsoft、Facebookなどの大規模データセンターで利用が始まっています。彼らはデータセンターの高効率化のため、自社のソフトウェアと組み合わせ可能なホワイトボックススイッチを利用し始めました。
この図はOCP Summit 2015でHPの方がキーノートで発表していたスライドです。既存のエンタープライズ向けスイッチの出荷量は落ちていって、大規模データセンター向けのスイッチが市場でドミナントになる、だいたい2017年には市場の50%程度が大規模データセンター向けになるだろうとのことです。
そうすると、既存のスイッチのスケールメリットが減少して価格が高くなり、競争力維持のために大規模データセンターの運用者以外もこうしたスイッチの利用を検討すべきと考えられます。
ネットワーク機器もサーバ同様にコモディティ化へ
ホワイトボックススイッチ登場の歴史ですが、1980年代の中頃にネットワーク機器という分野が登場しました。このときスイッチングはCPUで行われていました。それが、1990年第中頃にスイッチングのハードウェアオフロードが始まって、カスタムチップを各社が作るようになりました。
それがまた進んで2000年代中頃に汎用チップセットが登場します。ブロードコムという会社がマーケットリーダーで、この汎用チップによってネットワーク機器ハードウェアのコモディティ化というのが進んでいます。
アリスタネットワークス創業者のアンディ・ベクトルシャイム氏は、ネットワーク機器がムーアの法則に追いつくには、カスタムチップを辞めるのが一番の方法だと2012年に言っています。実際にアリスタのスイッチはホワイトボックススイッチみたいなもので、ASICのカスタムチップではなく、ブロードコムのチップが載ったODMベンダ製のスイッチハードウェアに彼らのソフトウェアを載せて出荷しています。
つまりネットワーク機器もサーバ同様にコモディティ化の道をたどっていると言えます。
ホワイトボックススイッチの内部
ホワイトボックススイッチはソフトウェアが載っていないので、ユーザーが自分でOSから作らなくてはいけないかというとそうではなくて、いくつかの方法があります。
図の一番左が、ハードウェアは買ってきてOSとアプリケーションを自分たちで作るというもの。ただこの方法でメリットのあるユーザーはいないと思います。
次が、OSはすでにあるものを調達してきて、そこに自分たちのネットワークアプリケーションを作る方法。
あるいは左から3番目として、アプリケーションまで含んだソリューションをパッケージされたものとして調達し、足りないものや自社システムとの統合の部分を開発する、というものです。
ホワイトボックススイッチをぱかっと明けてみると、スイッチングプレーン用のASICチップとCPUという2つの大きなコンポーネントがあります。
ほとんどのパケットはASICで処理されます。CPUの上でOSが動いていて、OS上のデーモンが、ASICチップベンダの提供するSDK、デバイスドライバを通じてASICをコンフィグするという仕組みになっています。
ほとんどのパケットがASICで処理されますが、ARPやBGPといった制御系のパケットはCPUまで転送され、デーモンで処理されてデーモンからパケットが送信され、ASICを通してポートからパケットが出て行きます。
ASICはブロードコムがマーケットリーダーですが、IntelやMellanox、Caviumといった会社のASICもあります。CPUはPowerPCが主流ですが、今後ハイエンドはx86に、ローエンドはARMになっていくのではないかと言われています。
≫後編に続きます。後編ではホワイトボックススイッチの中身と、相次いで登場するホワイトボックススイッチ用の開発用ソフトウェア、ドライバ、Linuxディストリビューションなどを紹介します。
あわせて読みたい
ホワイトボックススイッチとは何か? オープン化がすすむネットワーク機器のハードとソフトの動向(後編)。ホワイトボックススイッチユーザ会 第一回勉強会
≪前の記事
Microsoft Edge、レスポンシブイメージ対応の「srcset」に対応。夏以降は主要ブラウザすべてでsrcsetサポート