マイクロソフト、JavaScriptエンジンのChakraをオープンソースにすると発表。その狙いは？

マイクロソフトはWindows 10やMicrosoft Edgeで使われているJavaScriptエンジン「Chakra」を、「ChakraCore」としてオープンソースで公開すると発表しました。

ChakraCoreはJavaScriptの仮想マシンとして作動し、さまざまなアプリケーションに内蔵可能。また、Node.jsのようなサーバサイドでも利用可能だと説明されています（実際にマイクロソフトはNode.jsにChakraを組み込んだプロジェクトを過去にGitHubで公開しています）。

ChakraとChakraCoreには、次のような共通点、相違点があると説明されています。

ChakraCore shares the same set of capabilities that are supported by Chakra in Microsoft Edge, with two key differences.

ChakraCoreは、Microsoft Edgeでサポートされている機能と次の2点以外は同じだ。

First, it does not expose Chakra’s private bindings to the browser or the Universal Windows Platform, both of which constrain it to a very specific use case.

1つ目は、ChakraのブラウザもしくはUniversal Windows Platformとのプライベートバインディングがないこと。どちらもきわめて特定のユースケースに制約さたものだ。

Second, instead of exposing the COM based diagnostic APIs that are currently available in Chakra, ChakraCore will support a new set of modern diagnostic APIs, which will be platform agnostic and could be standardized or made interoperable across different implementations in the long run.

2つ目は、Chakraで利用可能なCOMベースのダイアグノスティクAPIの代わりに、ChakraCoreでは新しいダイアグノスティクAPIをサポートするサポート予定であること。それはプラットフォームとは関係なく、長期的には複数の実装においても相互運用可能互換性のあるものになるだろう。

Windows以外のプラットフォームへの移植も約束

ChakraCoreは2016年1月に最初のリリースが登場予定。このリリースではWindowsのみがサポートされるとのことですが、今後はさまざまなプラットフォームへ移植していくことを約束する（we are committed to bringing ChakraCore to other platforms in the future）とのこと。

マイクロソフトは.NETとASP.NETのオープンソース化を実現し、LinuxやMacOS Xでも同社のフレームワークをサポート。C#などで書かれたアプリケーションを実行可能にしようとしています。

そして今回、同社はJavaScritエンジンを公開し、それをWindows以外のプラットフォームへと広げようとしています。また同社は、いわゆる「よりよいJavaScript言語」としてTypeScriptをオープンソースで開発、公開しており、開発ツールであるVisualStudioで正式にサポートしています。

同社のオープンソース化戦略をこうしてみていると、積極的なオープンソース化によってミドルウェアレイヤでも同社のフレームワークを展開しているように見えます。これによって、あらゆるプラットフォームの上でマイクロソフトテクノロジーを利用したアプリケーションを動かすことができる、という状況を作り出そうとしているのではないでしょうか。

それは言い換えれば、アプリケーションの開発、デバッグ、運用のライフサイクル全体において、あらゆるプラットフォームでマイクロソフトが製品やサービスを提供できる世界へと進んでいるのではないか、とも考えられます。