国内企業におけるIT支出は横ばい、ただし情報部門のIT支出に対する決定権は少しずつ失われている。ITRの調査
調査会社のITRは、国内企業を対象にした「IT投資動向調査2016」の速報結果を発表しました。
2443件の有効回答数の平均によると、2015年度の国内企業のIT予算の増減傾向は、ほぼ70%の企業が「横ばい」と回答。2016年度もこの傾向は変わらないとITRでは予想しています。
ただし、IT支出における新規システム構築や大規模リプレースなどの新規投資に振り分けられる費用の割合は2015年度で30.7%。すなわちIT支出の約70%は既存のシステムの維持や保守に使われていることになります。しかも新規投資の割合は2002年度からの2015年度まで10年以上の期間で見ると、一貫して下がり続けています。
ITR シニア・アナリストの舘野真人氏によると、不景気のときの方が新規投資の割合が上がる傾向にあるとのことです。「不景気のときの方が思い切ってアウトソースを切るなどの既存のコストを下げる施策が行われるので、一時的に新規投資の割合が上がりやすい」(館野氏)。つまり2015年にやや新規投資比率が下がっているのは、2015年は景気が良いためではないかという指摘です。
しかし2002年度からのトレンドとして新規投資の比率が下降しているのは事実。代表取締役 内山悟志氏は「ERPやグループウェアといったエンタープライズITのシステムが成熟してきているため、従来のIT予算という面で見ると新規投資が減っているのではないか」と分析。一方で、従来のエンタープライズITという枠にとらわれない、事業部門などによるIT投資なども含めた広い意味でのIT支出は伸びるのではないかと分析しています。
情報部門が決定権を少しずつ失いつつある
その従来のIT支出を司ってきた情報部門がIT支出に対する決定権を少しずつ失いつつあることも、調査結果の1つとして示されました。
これはあくまでも回答者の印象面を数値化したという断りがつきつつも、すでにIT支出における情報部門の決定権は半数を下回り、43%弱になっているという結果が出ています。
IT支出においてどの分野を重視しているのか。最も重視されたのが「IT基盤の統合・再構築」、続いて「ビジネスプロセスの可視化・最適化」でした。3位に入ったのはなんと「マイナンバー制度への対応」で、4位が「全社ネットワーク環境の刷新・見直し」。
上位にインフラの最適化に関連した分野が多く入った一方、基本的には企業の競争力強化につながらないマイナンバー対応が入った点は今年の傾向として注目されるべきでしょう。
「国内IT投資動向調査2016」はITRの顧客企業およびWebパネルメンバーのうち、国内企業に所属するIT戦略の決定の関与者約5000人を対象にし、有効回答数は2443件。
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