GitHubはオープンソースのプロセスを標準化した。これからはコード開発以外にも使われていく。AWS Summit Tokyo 2015
Amazonクラウドのイベント「AWS Summit Tokyo 2015」が都内で開催されています。1日目の6月2日、デベロッパー向けのDevConセッションの基調講演には、GitHub, Inc.共同創業者 Scott Chacon氏が登壇。GitHubの登場がオープンソースの世界をどう変化させ、これから企業や社会にどのような影響を与えていくのかについて語りました。
基調講演の内容をダイジェストで紹介します。
この会場にいる人たちはこの10年でもっとも重要な人たち
GitHub, Inc.共同創業者 Scott Chacon氏。
現在、あらゆる企業はソフトウェア企業だと言える。電気自動車を作っているテスラでさえ、製品のために多くのソフトウェアを作り続けているソフトウェア企業だ。
機械で行われていることが、これからどんどんソフトウェアに置き換えられていくし、いまソフトウェアで実現できていないことも、いずれできるようになる。
つまりこの会場にいる人たちは、この10年でもっとも重要な人たちなのだ。ソフトウェアがいかに動作するのか、それをどう作るのかを知っている人たち。これからのイノベーションに必要なひとたちなのだ。
オープンソースの世界を見ても、この10年で重要さが大きく増しているとともに大きな変化も経ている。
オープンソースへの貢献プロセスはGitHubで標準化された
例えば「Redmine」というオープンソースソフトウェアを取り上げてみよう。
古き悪しき10年前。Redmineの開発に貢献したいと思ったらどうすべきだったか? Webサイトの下の方までスクロールすると、パッチの送り方の説明が書いてある。それを読んだらソースコードをダウンロードして新しいコードを書く。
当時はSubversionで管理していたので元のコードとの差分を作ってパッチを作り、WebサイトにIssueを登録してパッチをアップロードして、メーリングリストやチャットでそのことを告知して、といった手順になる。メンテナもいちいち手動でパッチを取り込む必要があった。
こういった細かい手順があり、しかもこの手順はオープンソースソフトウェアのプロジェクトごとに違っていたから、別のプロジェクトではまた別の手順を覚えなくてはならなかった。
まだGitHubは存在せず、これが10年前のオープンソースの状況だった。
現在、オープンソースへの貢献は劇的に変わっていて、Githubの上で貢献のプロセスが標準化されるようになった。
これまでよりも迅速で簡単で、オープンソースへ関わる仕組み、参入障壁が劇的に改善されたのだ。
もっとも大事なのは、プロセスが標準化されたということ。ある程度学習は必要だが、いちど分かれば再度学習する必要もなく、メンテナがパッチの送り方をいちいち教える必要もない。
先月5月には、1カ月だけで180万ものプッシュが行われた。
エンタープライズもオープンソースから学び始めている
エンタープライズ、大手企業もこの10年で大きく変わった。大手企業がオープンソースに貢献するようになっており、また社内でもオープンソースソフトウェアを使い始めているのだ。
10年前にOracleの代わりにMySQLを導入したら、担当者はおそらくクビになっていただろう。しかしいまはMySQLを選ぶことは普通のことになっている。
例えば、SAPは社内でGitHub Enterpriseを使ってソースコードを管理し始めているように。大手企業がオープンソースから学び始めている。
オープンソースの開発は、透明性やGitHubによるプロセスの共通性がある。このおかげでコラボレーションやコードの再利用、知識の共有と言ったことを実現している。
企業でもソフトウェア開発という同じことをしているのにも関わらず、いまだに高価で独自のソースコード管理システムを使っている。しかも開発者は同じオフィスにいて、タスクが割り振られており、毎日会議があったりする。
しかし企業のソフトウェア開発でもオープンソースの開発から学び、同じ開発ツール、GitHubが使われるようになってきた。
私たちGitHub社には何百人という開発者がいるが、アメリカのほとんどの州に開発者が分散しているだけでなくヨーロッパにも日本にも開発者がいて、分散して開発をしている。 オープンなプロセスで会議もなく、非同期のコラボレーションで開発をしているのだ。
企業でもコード以外でもGitHubが使われるようになる
この先の未来はどうなるのか?
例えばホワイトハウスのGitHubリポジトリがあり、政策文書が公開されている。GitHubによるコラボレーションモデルはコードの開発だけでなく、政策や法律にも活用できる。
コピーライターやアーティストや作家、政策担当者、法律担当者など、コードの開発でなくてもGitHubを使えることになる。
もちろんエンタープライズにもこうした動きは広がっていくだろう。最初に言ったとおり、すべての企業はソフトウェア企業になる。そうでなければ10年後に生き残れる可能性は低い。
企業の中で、法務担当者が文書をGitHubで公開してプルリクエストを見てほしい人に送り、別の担当者がそれを見る、といったことも企業の中で発生し、よりパワフルに仕事を改善できるようになるだろう。
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