DockerとKubernatesを核にしたPaaS基盤へと変わるOpenShift V3
クラウド上でデータベースのサービスやRubyやJavaといった言語の実行系を提供する、いわゆるPaaS型クラウド基盤のソフトウェアとして知られている主なものに、「Cloud Foundry」と「OpenShift」の2つがあります。
いずれもオープンソースですが、Cloud FoundryがすでにIBMのBluemixやHPのHelion、NTTコミュニケーションズのCloudnなどに採用されている一方で、Red Hatが中心となって開発されているOpenShiftはまだ大きな採用事例もなく、比較的目立たない存在でした。
そのOpenShiftが、今年登場するOpenShift V3でDockerとKubernetesを核としたPaaSへと大きくアーキテクチャを転換します。1月28日に開催された「第24回 PaaS勉強会」で、Red HatのChris Morgan氏がその内容を解説しました。
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OpenShift V3で過去のアーキテクチャを捨て大転換
Cloud FoundryもOpenShiftも、PaaSを実現するためにそれぞれ独自のアーキテクチャで構成されています。例えばCloud Foundryならば「Warden」と呼ばれる独自コンテナなどを内部で利用していますし、OpenShiftではアプリケーションを「Cartridge」と呼ばれる単位で管理したり、サーバを「Gear」と呼ばれる単位で管理する、といったことが行われています。
しかしこの1年で、PaaSを構成する強力な業界標準の候補が登場してきました。Dockerです。そしてDockerクラスタを管理するためのオーケストレーションツールであるKubernetesもオープンソースで登場しました。
そこでOpenShiftは大胆にもこれまでのアーキテクチャを捨てて、DockerとKubernetesを核としたPaaSへと転換することを昨年決断しています(OpenShift Originは、オープンソース版のOpenShiftのこと)。
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具体的なアーキテクチャは次の図に示されていて、OSにはRed Hat Enterprise LinuxとDocker専用のProject Atomic。アプリケーションの容れ物となるコンテナにDocker、オーケストレーションツールにKubernetes、さらにその上にアプリケーションのマーケットプレイスなどのサービスが予定されています。
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Kubernetesは、複数のサーバから構成される分散アプリケーションを設定ファイルでまとめてデプロイする機能や、クラスタ内のインスタンスの状態を監視する機能など、PaaSとして求められる機能の多くをサポートしています。
Red HatではKubernetesを中心にマルチユーザー機能、HTTPルーティング、ロギングなど、PaaSとして十分な機能を備えるように強化することで、OpenShift V3を実現しようとしています。
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ただし、これからの実装のうちどれがKubernetesの機能となり、どれがOpenShift側の機能として実装されるのかは「両社の境界は実際のところ明確でない」(Morgan氏)ため、いまのところ明言できないとのことでした。
PaaS基盤は技術革新の真っ最中
Dockerが分散アプリケーションのコンテナとして活用されていくことはほぼ明らかで、それを核にしたPaaSとなるOpenShiftは、積極的かつ大胆な方向転換をしてきたと感じられます。しかしCloud Foundryも現在開発中のバージョン3では内部のコンテナをDockerにも対応するDiegoに入れ替えるとしています。
PaaS基盤ソフトウェアの分野はさまざまな新しい技術が登場しているところですから、それに伴ってまだまだいろんな変化が起きそうです。
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