ChromeへのDartVM統合を断念、Dart開発チームが発表。今後はJavaScriptへのコンパイルにフォーカス
「DartVMをChromeに統合しないことにした」(We have decided not to integrate the Dart VM into Chrome. )。5月25日付けの「Dart News&Updates」ブログに投稿された「Dart for the Entire Web」の中で、Dartの共同創業者Lars Bak氏とKasper Lund氏はこのように記し、ChromeでJavaScriptと同じように使えることを目指したDartの目標を取り下げることを表明しました。
In order to do what's best for our users and the web, and not just Google Chrome, we will focus our web efforts on compiling Dart to JavaScript.
ユーザーや、単にGoogle ChromeではなくWebにとって何が最善かを考えた結果、私たちはDartからJavaScriptへのコンパイルに注力することにした。
Dartは引き続き上記の方針の下に開発を続け、Webアプリケーションの開発生産性向上を目指すとしています。
WebブラウザでネイティブにDartを走らせる目論見だった
Dartは2011年10月にGoogleが発表したプログラミング言語です。
Google社内で「JavaScriptは単なる言語の進化では修正できない根本的な問題を抱えている」という問題意識から始まったとされており、具体的にはJavaScriptの動的性質を保ったまま、より高い性能と大規模プロジェクトでの開発に適合した言語を作る、という考えがDartの背景にあったとされています。
そして最終的にはDartVMをChromeに統合し、WebブラウザでネイティブにDartを走らせることを目指していました。2013年に最初の正式版となるDart 1.0もリリース、ECMAでの標準化も開始されました。
いわゆる「よりよいJavaScriptを目指す言語」として、現在ではAltJSと呼ばれるさまざまな言語が登場しています。マイクロソフトのTypeScriptやHaxe、CoffeeScript、日本のDeNAからはJSXも開発されましたが、いずれもJavaScriptへコンパイルするものであり、Webブラウザへ統合しJavaScriptと同等に使われることを目指すDartの目標は非常に野心的なものでした(DartもJavaScriptへのコンパイル機能を備えています)。
しかし今回DartがWebブラウザへの組み込みを断念したことで、Webでネイティブに走る言語としてのJavaScriptには、現時点で事実上のライバルがいなくなたったといえそうです。
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