高価な共有ストレージアレイを不要にする「VMware Virtual SAN」導入済みサーバ、主要サーバベンダから登場
仮想マシンによるシステムを構築する際に、コスト上昇の大きな要因になるのが共有ストレージアレイでした。仮想化の大きな特長であるライブマイグレーションは、共有ストレージアレイを通じて仮想マシンのイメージが物理サーバを移動する仕組だったため、高性能な共有ストレージアレイは仮想化システムに不可欠なものでした。
VMwareが今年3月から出荷を開始した「VMware Virtual SAN」は、物理サーバに内蔵されているストレージをネットワーク越しに束ねて仮想的な共有ストレージアレイを実現することで、物理的な共有ストレージアレイを不要にするソフトウェアです。
これにより仮想化システム全体のコストを下げるだけでなく、システム構成が物理サーバのクラスタというシンプルなものになることや、高性能なストレージを備えた物理サーバを追加するだけでシステム全体のストレージ性能を向上させたり、ストレージ容量を増やすことも柔軟にできるようになる、といったメリットがあります。
ただしVirtual SANの実現には高速なネットワーク、フラッシュストレージのような高速なストレージを用意するなど、いくつかの技術的条件があります。
Virtual SAN導入済みのサーバが各社から登場
米VMwareは、こうしたVirtual SANの要件をあらかじめ満たし、ソフトウェアも導入済みのサーバ「Virtual SAN Ready Nodes」が、デルや富士通、ヒューレット・パッカードといったサーバベンダからリリースされたことを明らかにしました。
Virtual SAN Ready Nodesは、サーバベンダがVirtual SANに必要なサーバ、I/Oコントローラ、HDD、SSDなどのハードウェア、およびvSphereとVirtual SANのソフトウェアをすぐに利用可能な状態に組み上げて出荷するものです。
これにより、共有ストレージアレイの接続と構成にかかっていた手間が省略できるようになり、より迅速で仮想システムの立ち上げが可能になるでしょう。
VMwareがストレージベンダやネットワークベンダを浸食
Virtual SANはソフトウェアによって、従来の共有ストレージアレイをコモディティサーバと内蔵ストレージで置き換えてしまう、いわば仮想化システムのための目的特化型のSoftware-Defined Storageです。
これはEMCやNetAppといった共有ストレージアレイを主力としたハードウェアベンダの市場を、仮想化ソフトウェアベンダであるVMware(とサーバベンダの連合軍)が浸食しようとしていることになります。しかもVMwareはVMware NSXというネットワーク仮想化のソフトウェアを使って、ネットワーク機器ベンダの市場も侵食しようとしているわけです。
そうした中で今回のVirtual SAN Ready Nodesは、VMwareがストレージベンダに向けて繰り出す強烈な一撃になるのではないでしょうか。
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