SoftLayerはなぜIBMに買収されたのか、Amazonとの競合をどう戦うのか? SoftLayer COOに聞く
IBMによるSoftLayerの買収は、この1年でのクラウドにまつわるさまざまな動向の中でも大きなニュースの1つです。日本ではSoftLayerの知名度はそれほど高くありませんが、米国ではAmazon、Rackspaceに次いで知名度の高いクラウドベンダーです。
SoftLayerの特徴は物理サーバをクラウド内で利用できること、そしてスタートアップや中堅中小規模の顧客に利用者が多いことなどです。IBMの視点からするとこれらの特徴はミッションクリティカルな分野に適しており、しかも自社の顧客層とも重複しないという、買収するのに絶好の要素が揃っていたわけです。
6月にIBMによる買収が発表されてから初めて来日したSoftLayer COOのGeorge Karidis氏が昨年12月に来日しました。日本IBMのオフィスで行った記者向けラウンドテーブルから、IBMからの買収を受け入れた理由、日本市場での展開、そしてAmazonクラウドとの競争についての発言をまとめました。
なぜIBMからの買収を受け入れたのか?
─── 買収時の発表では、IBMはSoftLayerとクラウド部門を統合してクラウドサービス部門を新たに発足するとのことでした、いま組織はどうなっているのですか?
まだ組織は大きく変わってはいません。いまはSmarterCloudのお客様をSoftLayerへ移行しているところです。いま私は香港、東京などアジアに2週間かけて訪問し、いかに両者を統合するのかといった仕事をしています。
─── なぜ買収される相手としてIBMを選んだのでしょうか?
私たちにはシンプルなビジョンがありました。それは「世界を制覇する」というものです。インターネット上にあるあらゆるソフトウェアやサービスをSoftLayerのデータセンターに載せたいと思っていました。それを実現するためには大手とも組む、というのは私たちの基本的な考えです。その意味でIBMは私たちにとって最適な企業でした。
─── IBMはOpenStackをクラウド基盤に採用すると発表しています。SoftLayerはOpenStackにどう取り組んでいくのでしょうか?
OpenStackは私たちもずっと支持してきました。実際にオブジェクトストレージのSwiftを採用しています。SoftLayerのAPIをOpenStackに対応させるというプロジェクトにもとりかかっています。これはSoftLayerのAPIの変換レイヤを設けることで、マネジメントポータルを経由しなくてもクラウドを操作できるようにするものです。
私たちはそもそもオープンソースが好きですし、SoftLayerもオープンソースソフトウェアを使って構築するなど、さまざまなことに取り組んでいますし、それが正しい方向だと思っています。もちろん、それとは異なる方向性や機能を求めるお客様もいらっしゃいますので、そういう要望にも応えていきたいと思っています。何かに固執するといったことはありません。
日本市場での今後。Amazonとどう戦っていくのか?
─── 日本市場での現在のユーザー数や今後の目標はありますか? 日本語化の予定は?
IBMに買収される以前は日本でのプロモーションを行っていなかったこともあり、まだ少数のお客様がいる程度です。ここ数カ月でマーケティング活動が始まったというところです。
日本ではまずSoftLayerというブランドを確立していきたいと思っています。
日本語化についてはこの数日で議論していますが、セールスとサポートについてまずはプロジェクトを立ち上げ、開始しています。もちろんローカライズについてもどうしていくのか議論を始めています。
これまで日本市場でSoftLayerが成長していなかったのは日本語化されておらず、日本語ができるサポート要員の採用にも至らなかったといったことが課題でしたので、そうした面でIBMの能力は期待できるものだと思っています。
─── AWSとの競合についてはどう考えていますか?
これはよく聞かれる質問の1つですが、AWSともほかのクラウドベンダーとも、同じ市場で基本的に同様のソリューションを提供している以上、必ずどこかで競合している、というのが現実です。
一方で、市場が大きく成長しているおかげで他社の顧客を奪うようなことをしてこなかったという意味では誰とも競合していなかったともいえます。
しかし今後、多くのエンタープライズ系のお客様などがさまざまなクラウドを吟味して、その結果IBMを信用する、といった選択をするようになると思います。その意味で、私たちは競争を引き起こさざるを得ないのではないかと思っています。
私たちはローエンドなサービスで市場へ入っていこうとしていません。私たちはミッションクリティカルな市場へ入っていこうとしています。だからIBMと相性が良く、性能や相対的に見たコストの点でも優れていると思っています。
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