クラウド市場で過去最大規模の買収。欧SAPがSaaS大手のコンカーを買収、クラウドサービスを強化
欧SAPはクラウド市場で過去最大規模の買収を発表しました。企業向けに出張管理や経費精算などのサービスをクラウドで提供している米コンカー・テクノロジーズを、約83億ドル(約8300億円)で買収すると発表しました。
コンカーが同社のクラウドサービスとして提供する出張管理や経費精算は、企業向けのポータルから社員がログインして出張先を入力するだけで、提携する旅行代理店からの情報を元に社内規定に応じた路線と座席などの等級、ホテルなどが選択できたり、出張後に領収書をスマートフォンのカメラで撮影すると経費精算が行えるなどの機能を備えています。
コンカーは日本法人も設立しており、国内のホテル予約サービスのために楽天トラベルと提携、運賃データベースをジョルダンと提携して参照できるようにしています。
コンカーのクラウドは企業の総務部門などが導入を検討するようなSaaS型クラウドサービスです。そのため開発者などのあいだではそれほど知名度の高いものではありませんが、前述のように日本法人があり、2014年9月時点で国内では300社以上、グローバルでは150カ国2万3000社、アクティブユーザー数にして2500万人が利用していると発表されています。
SAPによるコンカーの買収額は、金額的にもサービスの規模にしても、おそらくクラウド市場で過去最大の買収になると思われます。ちなみにIBMによるSoftLayerの買収額は非公開ですが20億ドル前後だといわれており、今年1月にはIBMが12億ドルの投資でデータセンターを強化すると発表しています。これと比較すると、今回のSAPによる買収額83億ドルの大きさが分かるのではないでしょうか。
企業の基幹業務とその周辺をクラウドサービス化していくSAP
SAPは2012年には企業間商取引のクラウドサービスを提供する米アリバを買収、同じく2012年に人事管理をクラウドサービスで提供するSucessFactorsを買収、今年2014年3月には企業が派遣社員やフリーランスなどを管理するクラウドサービスを提供するFieldglassを買収、そして今回、企業向けの出張経費管理をクラウドサービスで提供するコンカーを買収するなど、相次いで企業向けのクラウドサービスを買収してきました。
同社は企業の基幹業務を担うERPソフトウェアの最大手です。そしてこれまでのクラウド関連の買収は明らかにその基幹業務の隣接領域にあります。同社自身もERPを「SAP HANA Enterprise Cloud」によってクラウド化していることを考えれば、同社はERPとその周辺領域にある企業のバックエンド業務をすべてクラウドサービスとして提供することにまい進しているように見えます。
コンカーの買収も、それを実現するための大きなマイルストーンとなるのでしょう。
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