Rackspace、身売り交渉を打ち切り、単独でクラウド市場を戦うと表明

2014年9月18日

Amazon、Google、マイクロソフトなどビッグプレイヤーがひしめくクラウド市場が厳しい競争環境にあることは誰の目にも明らかです。その中にあって中堅のクラウドベンダーであるRackspaceは単独で生き残ることはもはや困難と考え、水面下で買収もしくは提携をしてくれる相手を模索していました。

しかしこれを打ち切り、独自の路線で引き続き単独でクラウド市場を戦っていくことを、昨日付けのプレスリリース「Rackspace Ends Formal Evaluation of M&A Transactions; Focus Remains on Managed Cloud Market Leadership」で明らかにしました。

Rackspace Hosting | Investor Relations | Press Release

同社が行っていた買収候補先との交渉は、ブログ「雲になったコンピュータ」のエントリ「続) Rackspaceはどうなるのか!」がとても詳しくまとめています。同エントリによると、CenturyLinkやヒューレット・パッカードなどがRackspace買収に動いていたと伝えられています。

しかし今回のプレスリリースで、こうした買収交渉を終了し、マネージドクラウド企業として引き続き単独で企業を存続させていくことを表明しました。プレスリリースから引用します。

After a comprehensive review, the board decided to terminate M&A discussions. Based on Rackspace's reaccelerated revenue growth and its potential trajectory for the coming year, the board concluded the company is best positioned to maximize shareholder value by executing its strategy as the #1 managed cloud company.

包括的なレビューの後、役員会は買収交渉に関する議論を打ち切ることを決定しました。来年のRackspaceの売り上げの再成長および可能性の軌道を基に、役員会はナンバーワンマネージドクラウド企業の戦略を実行することこそ株主にとっての価値の最大化になると結論づけました。

なぜRackspaceはこうした結論を出したのか。前述の「続) Rackspaceはどうなるのか!」では、2014年第2四半期の同社の業績が改善したからではないかと推測しています。

クラウドの付加価値サービスで生き残る

Rackspaceが主に位置しているIaaS型クラウドサービスでは、今年の3月にGoogleが価格競争の引き金を引く発表を行い、Amazonクラウド、Microsoft Azureなどがそれに応じるという巨人同士がぶつかりあう局面に入っています。

Rackspaceの規模の会社がこれに正面から立ち向かうのは得策ではありません。そこで同社は8月に構築運用保守付きの付加価値クラウドサービスである「Managed Cloud」という戦略への転換を発表しました。

fig Managed Cloudカンパニーを掲げたRackspaceのトップページ(赤線は筆者による)

関連記事:米Rackspaceがクラウドの低価格競争から脱出。新分野「Managed Cloud」で構築運用保守付きの付加価値クラウドへ方針転換

つまり単なる仮想サーバやストレージなどのコンピューティング資源をレンタルするだけではなく、専門家によってその構築や運用を手助けするというきめ細かいサービスを載せたクラウドとしてナンバーワンになることを宣言したわけです。これは規模を追うことで価格競争に勝ち残ろうとする巨大クラウドベンダには真似のできない戦略といえます。

また、その数週間前にはベアメタルの提供である「OnMetal」サービスの提供も正式に開始しています。

クラウドの巨人たちは日本国内やアジアにもデータセンターを設置しており、日本のクラウドベンダもいずれRackspaceと同じような状況に直面する可能性があります。そのとき、クラウドベンダごとの特長を活かした付加価値とはどのようなものなのかがそれぞれのベンダに問われることになるのでしょう。

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