クラウドの時代にはコミュニティがエンジニアの成長を支えていくのではないか
ちょうど一週間前の大雪が降った日に、翔泳社主催のイベント「Developers Summit 2014」(通称デブサミ2014)が開催されました。今回のデブサミでは、僕はAmazon Web Servicesの玉川さんと一緒に、基調講演「クラウドがもたらした多様な破壊と創造」に登壇していました。
講演の内容は標題通り、クラウドによって、例えば従来型のSIや従来の労働集約的なシステム運用、パッケージソフトウェアといったものが破壊されつつあり、ソフトウェアのサービス化やビッグデータの活用といったものが創造されていくだろう、といったものです。
この話の中で、創造されるものの最後に挙げたのが「活発なコミュニティによる個人の成長」というものでした。
これまで、企業は社員の成長にある程度責任を持ち、OJTや仕事を通して教育機会を提供してきました。しかしクラウド時代には今まで以上に、コミュニティを通してエンジニア個人が成長していくことが重要になるのではないか、という予想です。
クラウド関連の技術は、社内や仕事を通して学べる範囲を超えている
ここ数年、ずっとクラウドの技術動向を追ってきて感じるのは、クラウドというのはさまざまな技術が複雑に絡み合ってできている、ということです。当然、それを活用する際にも複数の技術にまたがった知識が必要になります。
クラウド関連の技術のキーワードを思いつく順に挙げたとしても、例えば、仮想マシン、ハイパーバイザ、Software-Defined Networking、仮想ネットワーク、分散オブジェクトストレージ、Hadoop、Chef、Vagrant、Puppet、Jenkins、継続的インテグレーション、DevOps、Blue-Green Deployment、Immutable Infrastructureなどなど無数にあります。
これらを理解するには個別の技術を理解するだけでなく、関連する周辺技術も含めた理解が不可欠です。しかも、すごい速さでこれらの技術が登場し、変化し、また新しい技術が登場するというサイクルに入っています。
会社の上司が、こうしたクラウド時代の新技術を包括的に教えてくれるでしょうか? OJTでSoftware-Defined Networkingが学べる会社はありますか? 社内に分散オブジェクトストレージのノウハウを教えてくれる先輩はいますか? ベテラン社員が継続的インテグレーションのやり方をたたき込んでくれますか?
クラウド関連の技術範囲はとても広く、社内や仕事を通して学べる範囲をはるかに超えてしまっています。普通の企業が1社でクラウドを学べる環境を作ることは非常に難しくなっている、というのが現実に起きていることだと思います。
コミュニティがエンジニアの成長のための大事な場所に
だから、こうしたクラウド時代のさまざまな技術を学ぶために社外へどんどん出て行く必要があります。デブサミのような技術者向けのイベントはもちろん、クラウドベンダのユーザー会やボランティアベースの勉強会、メーリングリスト、それにPublickeyのようなブログもそうですし、YouTubeなどで公開される動画にも有益な情報がたくさんあります。
いわゆるコミュニティのような場所こそ、エンジニア同士が情報発信をしあうような、クラウドに関する技術情報が最も活発に行われる場所になっているのです。
クラウド時代には、そうしたコミュニティを通じて多くのエンジニアが学んでいく、あるいは学ぶきっかけを作っていくのではないか。そこからエンジニアが企業へ知識を持ち帰り、仕事へ活かしていく。コミュニティこそエンジニアが成長するための大事な役割を果たす場所になるのではないかというのが、僕の予想かつ希望です。
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