変わるストレージの巨人EMC、戦略の中心にソフトウェア。ViPRによるSoftware-Defiend Storageを強化。EMC World 2014
今年の1月にEMC Information InfrastructureのCEOに任命されたばかりのDavid Goulden氏は、EMC World 2014初日の基調講演の締めくくりに「EMCはすべてのストレージのオーケストレーションを、ViPRのSoftware-Defined Storageによって提供する。これによって誰もがプライベートクラウド、パブリッククラウドの情報インフラを構築できる」と述べて、下記の図を示しました。
これはストレージベンダ最大手であるEMCの戦略が、優れたハードウェアとしてのストレージの提供だけでなく、優れたストレージソフトウェアの提供にも置かれるようになったことを象徴しているように映ります。
ブロックストレージ機能やOpenStack APIに対応したViPR 2.0
David Goulden CEOは、ViPRが今後同社のストレージ機能をどんどん吸収し、強化されていくことを明らかにしています。
今回発表された最新バージョンとなるViPR 2.0では、コモディティハードウェアで動作するようになったのに加え、オブジェクトストレージ、HDFS、ブロックストレージの機能を提供。
つまり、ViPRとコモディティサーバがあれば、これらの機能を備えたストレージが構築できてしまいます。そして実際にEMCはこのViPRのソフトウェアとコモディティサーバを組み合わせた新製品「EMC Elastic Cloud Storage」を同時に発表しています。
もともとViPRは、同社や他社のストレージの上位レイヤとしてストレージを抽象化する機能を備えていますが、ViPR 2.0では下位のストレージとしてScaleIOやXtremIOなどへのサポートを広げるとともに、OpenStackのブロックストレージAPIであるCinderをサポートすることで、これに対応した他社のストレージにも幅広く対応するようになりました。
ViPRによってあらゆるストレージを抽象化し、支配下に置く方向です。
あらゆるストレージの機能をViPRソフトウェアへ
さらにGoulden CEOは今後ViPRに対して、同社のミッドレンジ向けストレージであるVNXの機能を「Project Liberty」として、スケールアウトストレージであるIsilonの機能を「vOneFS」として実装していくことを表明しています。
それだけでなく、バックアップ/アーカイブ/重複排除/レプリケーションなどを実現する同社のData DomainやAvamar、VPLEX、RecoverPointの機能などもすべてViPRに実装することも明言しました。
これが実現すれば、ストレージを内蔵したコモディティサーバにViPRをインストールすることで主要なストレージの機能は実現できてしまい、専用のストレージ機器を購入する必要性がどんどん低下していきます。
ストレージの付加価値を、ストレージ機器から引きはがして上位レイヤのソフトウェアで実現する。サーバの仮想化やネットワークの仮想化(あるいはSoftware-Defined Networking)で起こっていることと同じことをEMCは自身の手で積極的に推進しているのです。
とはいえ抽象化(あるいは仮想化)されたストレージの性能は、抽象化レイヤの支配下にある物理ストレージの性能に依存します。だからこそ同社はストレージの物理性能を極限まで引き上げるためにDSSDを買収し、一方で大容量のために「EMC Elastic Cloud Storage」のようなハイパースケールのストレージにも注力しています。この強力な物理レイヤの製品群と、ViPRというソフトウェアレイヤの両面を維持していくことが今後のEMCの強みになっていくのでしょう。
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