ヒューレット・パッカード、AWS互換のクラウド基盤ソフトEucalyptusを買収。同社のOpenStack路線をAWS互換で強化か
Eucalyptus(ユーカリプタス)は、クラウド基盤を実装するオープンソースソフトウェアとしてもっとも古いものの1つです。もともと2007年頃(今から7年前!)にUCSB(カリフォルニア大学サンタバーバラ校)で開発が始まり、後にEucalyptus社による商用版が登場します。
当初からAmazon EC2やAmazon S3といったAmazonクラウドとの互換性が大きな特長で、2012年にはAmazonクラウドとの提携も発表されました。
そのEucalyptusを、米ヒューレット・パッカードが買収することが発表されました。買収後、EucalyptusのCEOであるMarten Mickos氏がヒューレット・パッカードでクラウド部門の事業責任者になります。
HPが得たのは人材とAWS互換技術ではないか
ヒューレット・パッカードは今年の5月に「HP Helion」という新しいクラウドのためのブランドを発表。OpenStackをベースにしたクラウド用基盤ソフトウェアをオンプレミス向け、および自社クラウドサービスの基盤としても採用することを明らかにしています。
同社のクラウド事業の責任者となるMickos氏は、プレスリリースでこのHP Helionをさらに強化していくと発言しています。
“Eucalyptus and HP share a common vision for the future of cloud in the enterprise,” said Mickos. “Enterprises are demanding open source cloud solutions, and I’m thrilled to have this opportunity to grow the HP Helion portfolio and lead a world-class business that delivers private, hybrid, managed and public clouds to enterprise customers worldwide.”
Eucalyptusとヒューレット・パッカードはエンタープライズ市場におけるクラウドの未来像をともに共有している。エンタープライズ市場はオープンソースのクラウドソリューションを求めており、私はHP Helionの製品群の強化、およびプライベート、ハイブリッド、マネージド、パブリッククラウドのソリューションを世界中のエンタープライズカスタマーに届ける機会を得てとてもわくわくしている。
この買収でヒューレッット・パッカードが獲得したのは大きく2つあります。
1つは、当然ながらAmazonクラウド互換機能を備えたEucalyptusのソフトウェア資産そのものです。クラウド市場において、その巨人であるAmazonクラウドとの連係と共存はあらゆるクラウドベンダにとって重要な課題です。そして現在のところ、AmazonクラウドのAPIは事実上、クラウド市場の業界標準的APIの地位に近づいています。
Eucalyptusを買収し、そのCEOがヒューレット・パッカードのクラウド事業責任者に就任したからといって、同社のクラウド基盤がごっそりOpenStackからEucalyptusへ移行する、ということはまず考えられません。それよりも、同社のOpenStackを基にしたクラウド基盤ソフトウェアにEucalyptusの技術であるAmazon互換機能を加え、Amazonクラウドとの連係を強化することのほうが顧客の要望にかなうものになろうことは間違いありません。
おそらく今後、HP Helionのクラウド基盤ソフトウェアの中にそうしたEucalyptusの機能が統合されていくのではないでしょうか。
もう1つはクラウド事業責任者となったEucalyptus CEOのMarten Mickos氏です。まだクラウド市場が注目されてわずか数年。その中でエグゼクティブの経験と実績を備えた人材は非常に貴重だといえます。現在のところクラウド市場でそれほど存在感を示せていないヒューレット・パッカードにとって、これまで何年もクラウド市場で独立して戦ってきた経験を持つMickos氏は、5月にHelionを発表し、これから積極的な攻勢に出ようとしている同社にとって不可欠な人材だったのではないでしょうか。
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