サーバ市場でシェア2位のIBMがx86サーバ事業をレノボに売却し、メインフレームとPowerサーバを持ち続ける理由
米IBMはx86サーバ事業をレノボに売却することを発表しました。これによってx86サーバ製品群であるSystem x、BladeCenter、Flex Systemなどの製品ラインアップがIBMからなくなることになります。
製品とあわせて7500人の関連部門の従業員もレノボへの雇用が提示され、保守サービスなどもレノボへ移管される予定です。
一方でIBMはメインフレームとPowerサーバなどは引き続き自社製品として開発と販売を続けていくことも明らかにしています。また、ソフトウェア製品も引き続きx86プロセッサ対応を続けていくことに変更はありません。
IBMのサーバ事業はもともとハイエンド志向だった
下記の表は、米ガートナーが昨年12月に発表した2013年第3四半期のサーバ市場のシェアを金額と台数で示したものです。x86サーバだけではなくメインフレームやRISCサーバなどすべてが含まれています。
ここからIBMがx86サーバ事業を売却した理由が見えてきます。
表を見ると、サーバ市場においてIBMは金額ベースでHPに次いで第2位となっており、3位のデルを引き離して成功しているように見えます。
ところが右の台数ベースで見ると、IBMは第3位で、台数はデルの半分以下です。つまりIBMのサーバ市場での成功は、単価の高いサーバによってによってもたらされていることが分かります。IBMがサーバビジネスにおいてローエンドを売却し、ミドルからハイエンドに位置するメインフレームとPowerサーバにフォーカスする理由が1つ、ここから読み取れます。
x86サーバ市場は名もないベンダたちとの戦いになる
しかしそれ以上に重要な事実がこの表には含まれています。それはいちばん下にある「Others」の項目です。
Othersは、金額ではIBMより上でHPより下ですが、台数ではシェア40%で飛び抜けて1位です。つまりOthersはサーバの単価が安い。このOthersとは、そのほとんどが台湾などにあるサーバの製造を請け負う企業群、いわゆるホワイトボックスのベンダだとみられています。これらのベンダが、FacebookやGoogleといった大規模なデータセンターを運営する企業からサーバの製造を直接受注し、納品しているのです。
この先のx86サーバ市場において大規模データセンターによる需要が支配的になることは明らかであり、しかもそのデータセンターを保有する企業が大手ベンダを通さずにサーバを調達する例はますます増えていくでしょう。例えばOpen Computeのようなオープンで優れた仕様を元に自社のカスタマイズを加え、直接台湾などのサーバ業者へ大量発注した方が安く、望むサーバを入手できるようになってきているのです。
x86サーバ市場で生き残っていくということはつまり、こうしたOthersに位置するホワイトボックスのベンダたちと戦っていくことを意味しています。IBMにとってそれは自社のコアコンピタンスから遠く離れたところで戦うことになることは明らかです。
だからこそIBMはx86サーバ事業を23億ドルであっさりとレノボに売却したのです。そしてこの発表に先立つ1月10日に、人工知能を目指すWatsonに10億ドルを投資するとともにWatson Groupを発足させて商用化に取り組む発表を行い、さらに1月17日にはSoftLayerを中心とするクラウド事業への12億ドルの投資を発表するという一連の動きは、IBMのコアコンピータンスを考えれば、どれもつながったものに見えてくるでしょう。売却金額と投資金額の合計がほぼ同じなのも、もしかしたら偶然ではないのかも知れません。
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