シャーディングを実現するSpiderストレージエンジン、MariaDBがバンドル開始
データベースのスケーラビリティを改善する代表的な方法として、データを分割して複数のサーバで処理する「シャーディング」があります。そのシャーディング機能を持つMySQLストレージエンジンが「Spider」が、MySQL互換のMariaDBにバンドルされると、開発者である斯波健徳(しばけんとく)氏のブログにポストされた記事「[MariaDB][Spider]SpiderがMariaDBにバンドルされました」(8月23日付け)で紹介されています。
Spiderストレージエンジンの概要は、MySQLについていつも詳しい解説をしてくれるブログ「漢のコンピュータ道」の2010年3月のエントリ「Not Only NoSQL!! 驚異的なまでにWRITE性能をスケールさせるSPIDERストレージエンジン」などで分かりやすく説明されていますが、簡単に言えばデータベースに対する参照や更新などの処理を複数のデータベースサーバへの分散処理にしてくれ、高いスケーラビリティを実現してくれる、というものです。
Spiderでは、分散されたどのデータベースサーバにどのデータを格納したかなどの情報をSpiderが管理してくれるため、データベース管理者はデータが分散されていることを意識することはなく、ジョインやトランザクション処理などもそのまま扱うことができます。アプリケーションはそのままで、データベースのスケーラビリティを高めることができるのです。
MariaDB 10.0.4でバンドル開始
MariaDBはMySQLからフォークしたプロジェクトで、MySQL互換のデータベースを提供しています。Spiderがバンドルされるのは現在アルファ版として開発中のMariaDB 10.0.4。
最新の安定版はMariaDB 5.5で、MariaDB 10.0はその次のバージョンとして開発が進んでいます。なぜ5.5の次のバージョンが5.6ではなく10.0なのかは、MariaDB Blogにポストされたエントリ「Explanation on MariaDB 10.0」で次のように説明されています。
To call the next MariaDB version MariaDB 5.6 would be misleading.
次のMariaDBのことをMariaDB 5.6とするのはミスリーディングになるだろう。
Eventually there will be a version of MariaDB which includes all the features of MySQL 5.6 either ported or implemented in a different way, but before that there will be at least a couple of releases which include some features which have been ported from MySQL 5.6 and some completely new features that aren't in MySQL 5.6.
というのも、最終的にはMySQL 5.6と同じ機能を、移植あるいは別の実装として備えたMariaDBがいずれリリースされるだろう。しかしその前に、MySQL 5.6から移植されてきた機能と、MySQL 5.6にはない新機能を備えたリリースが少なくとも何度か行われるだろう。
つまりMariaDBはMySQL互換ではありますが、MariaDB 10.0ではMySQLにはない新機能も備える方向で開発されており、それゆえにバージョンが10.0となっているというわけです。Spiderのバンドルもそうした新機能に該当するのかもしれません。
今年の4月、Wikipedia英語版のバックエンドとして使われていたMySQL 5.1がMariaDB 5.5にリプレースされたほか、3月にリリースされたOpenSUSE 12.3、7月にリリースされたFedora 19の2つのメジャーディストリビューションでMySQLに代わりMariaDBがデフォルトのデータベースとなるなど、MariaDBは普及の足がかりをじわじわと広げつつあります(Red Hat Enterprise 7でもMariaDBをデフォルトデータベースにするという報道がありましたが、これは正式な決定ではないことが追って報道されました)。
MariaDBにSpiderがバンドルされることで、MariaDBの広がりとともにSpiderの利用も広まっていくことが期待されます。
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