チップスケール原子時計やSoCがこれからクラウドを変えていく~クラウドコンピューティングの雲の中(その3)。NII Open House 2013

2013年6月18日

クラウドはどのような仕組みで構成されていて、この先どう進化していくのでしょうか。6月14日に開催された国立情報学研究所主催のオープンハウス「NII Open House 2013」が開催され、国立情報学研究所 佐藤一郎教授が「クラウドコンピューティングの雲の中」と題した講座を行いました。

(本記事は「分散ストレージの整合性をいかに解決するか。プライマリ-バックアップ方式と分散コミット~クラウドコンピューティングの雲の中(その2)。NII Open House 2013」の続きです)

チップスケール原子時計がすべてのサーバに入る

ここから少し、最近のトレンドの話をします。

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いま原子時計が小さくなっています。これから何が起きるかというと、おそらくすべてのサーバに原子時計が入る時代が来ます。もしかしたらすべてのコンピュータに入るかもしれません。

原子時計をコンピュータに入れると、時間や測位の精度向上のメリットがありますが、データセンターでもデータの順序を付けるのが容易になります。

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複製データの整合性の管理という観点でデータセンターを見ると、たくさんのコンピュータをデータセンターに詰め込んだ方が順序づけできるサーバが増やせます。でも、原子時計がサーバに入ることでデータに精密な時間を持たせられると、1つのデータセンターにサーバを詰め込まなくてもデータの順序づけができるようになる。するとデータセンターにサーバを詰め込む必要がなくなるので、クラウドの形がいまとはずいぶん違ってくるかもしれません。

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モバイルデバイスの技術がクラウドに入っていく

それから、いまの半導体技術のテクノロジーリーダーは基本的にはPCです。なのでクラウド事業者もPCの技術をベースにサーバを作っています。しかし、そろそろPCの出荷数よりもタブレットやスマートフォンなどモバイルデバイスの出荷数のほうが上回ってきています。

半導体の世界では数が出る方が研究開発費がかけられますから、いずれはモバイルデバイス用の半導体の方が性能が伸びる可能性がでてきます。そうするとクラウドの中にモバイルデバイスで開発された技術が入ってくるかもしれません。

モバイルデバイス向けの半導体技術でよく言われるのは消費電力が少ないことです。もう1つ重要なのはSoC(System on a Chip)です。SoCでは、チップにいろんな回路を入れられます。マザーボードに載っていた回路をチップに入れられるようになるので、データセンターはおそらくいまよりもっと集約ができるようになります。

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しかもSoCは設計にコストや時間がかかるため、ある程度の規模のデータセンター事業者でないといいSoCを作ることができません。小さなデータセンター事業者では設計できないので、結果として性能的にも負けてしまいます。

また、車載用の組み込みプロセッサは85度など運用温度が高いので、もしかするとほとんど冷却しなくてもいい、非常に熱効率のいいデータセンターといったものを作れるかもしれません。

最新の半導体工場を作るのにだいたい1兆円以上の投資が必要で、すると月産100万台以上の半導体を製造しないとペイしません。つまり最新の半導体技術を利用するには、それを使っているスマホの半導体やチップに近い構成にしないとその利点が生かせない時代になります。

クラウドにはサイエンスの力も必要

まとめですが、クラウドとは複数のコンピュータを用いることで壊れてもやっていけるように作る。ただし複数のコンピュータでデータを保持すると更新の手間がかかる。そのために裏で手間暇をかけています。

この、裏で何をしているかを知っていることが、効率のいいアプリケーションをクラウドで作れるかどうかがかかっています。

クラウドは規模が大きく複雑なので、たぶんいままでのようなエンジニアリングだけで何とかなる世界ではなく、サイエンスの力も必要です。分散システムや分散アルゴリズムには理論で証明された方法などがあるので、それらをうまく使わなければいけないと思います。

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コアとなる技術は変わりませんが、実装技術などは日々変わっているので3年前の知識は役に立たないと思います。こういう場でサイエンス側の知識を得るのも、クラウドを使うためには重要ではないかなと思います。

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2年前の2011年、佐藤教授のクラウドに関する講演。

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