SAPジャパン、クラウド事業に本格参入を発表。SAP HANA Cloud Platformを国内でも展開
「SAPのクラウドサービスをすべて日本で、ローカライズなども含めても展開していく」(SAPジャパン バイスプレジデント クラウドファースト事業本部長 馬場渉氏)。独SAPは先月米国オーランドで開催したイベント「SAP SAPPHIRE NOW」において、同社が開発したクラウド「SAP HANA Enterprise Cloud」を核としたクラウドの本格展開を発表しています。これを受けて、SAPジャパンは日本でも本格的なクラウドの展開を開始すると発表しました。
同社代表取締役社長 安斎富太郎氏は6月5日の会見で、クラウドの利用が「コストも安く時間軸も早くできて、お客様の経営に有効である」と指摘。同社の強みである業務アプリケーションと組み合わせることで同社クラウド事業には大きな可能性があると強調しました。
どんな企業規模、どんな業種も対象に
SAPのこれまでのクラウドサービスは、主に中堅中小企業向けとしてBusiness ByDesign、人事管理のクラウドサービスとしてSuccessFactorsなど、規模や用途を想定したものが用意されていました。しかし今後はそれを改めると馬場氏。
新しいSAPのクラウドサービスは機能ごとに分解され、「People」「Customers」「Money」「Suppliers」の4つのカテゴリの下に分類されることになります。そして大企業から中堅中小まで、業種も問わず、これらのサービスを自由に組み合わせて導入できるようになるとのこと。「3カ月から6カ月で事業部門が導入できるようなものになる」(馬場氏)。
また、これまでサービスごとにばらばらだったクラウド基盤も、単一のSAP HANA Cloud Platformへと統一されます。SAP HANA Cloud Platformでは、PaaSとしてJavaによるアプリケーション開発も可能。
クラウド基盤ソフトやミドルウェアを顧客やデータセンター事業者が展開も
さらに興味深いことに、今回発表されたクラウド戦略では、SAP自身によるクラウド運営だけでなく、同社のクラウドサービスを顧客のデータセンターで運用したり、あるいはデータセンター事業者などが運用して顧客にサービスを提供することも可能にすることが表明されました。
これは、SAP HANA Enterprise Cloudの基盤としてSAPが開発したベアメタルサーバに対応したクラウド基盤ソフトウェアやOS、ミドルウェア、そしてクラウドアプリケーションなどすべてが社外に提供されることを意味します。
これにより、例えば情報子会社がグループ企業向けにSAPのクラウドサービスを提供する、あるいはデータセンター事業者が国内でSAPのクラウドサービスを展開するといったことが今後予想されます。基幹業務を扱うSAPのアプリケーションでは、国外のデータセンターや他社のデータセンターでの運用を嫌うユーザーが多いことを考えると、この戦略はSAPらしいものだといえるでしょう。
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