SAP、ERPのデータベースを自社で提供開始。「SAP Business Suite powered by SAP HANA」発表
SAPジャパンは2月20日、インメモリデータベースのSAP HANAと、同社のフラッグシップ製品でもある基幹業務向けアプリケーションのSAP Business Suiteを組み合わせた「SAP Business Suite powered by SAP HANA」を発表しました。
インメモリデータベースは、データをメインメモリ上に置いて処理をすることで極めて高速な処理を行えるデータベースとして、特にここ数年、サーバの搭載メモリ量が増大したことにより注目されています。しかしこれまでは証券取引や大規模データ分析など、高速性を活かしたニッチ分野向けと見られてきました。
それが、企業の基幹業務向けアプリケーション、しかもERPの代名詞ともいえるSAP ERP(旧SAP R/3)を含むSAP Business Suiteのバックエンドデータベースとして使われることは、インメモリデータベースが現在主流のディスクベースのリレーショナルデータベースと同じように利用できる製品として成熟したのだということを広く示す出来事になるでしょう。
SAPはSAP Business Suiteで引き続き従来のOracle、SQL Server、Sybase ASEなどのサポートは継続し、新たにSAP HANAへの対応を広げると発表。「(SAP Business Suiteは)あくまでもオープンな製品である」(安斎富太郎 SAPジャパン 代表取締役社長)。
HANAに合わせてアプリケーションを再設計、性能向上へ
ただし、最新の「SAP Business Suite」は、「HANAに合わせて再設計した」(リアルタイムコンピューティング事業本部長 馬場渉氏)と説明されています。HANAがバックエンドデータベースとして使われたときのみ、通常はデータベースに問い合わせをしつつアプリケーション側のロジックに沿って実行される処理が、すべてHANA側のインメモリデータベース内のストアドプロシージャとして処理されることによって極めて短時間で処理可能になっているとのこと。
例えば「ある製品の数万点の部品を全部展開し、部品にひもづいた原価を積み上げて計算し、どういう部品や機能を削ぎ落としていくと新興国向けの安価なエアコンやバイクが作れるか」(馬場氏)といった、従来であれば処理が重すぎて実用的な時間内では無理だったシミュレーションが可能になっています。
「SAP Business Suite powered by SAP HANA」の処理性能はインメモリデータベースによるデータベースの高速性以上に、このアプリケーション側の再設計によるものが大きく作用しています。「データベースをHANAに変えることで数十倍、数百倍速くなるが、アプリケーションを最適化することで1万倍クラスのパフォーマンスアップが実現する」(馬場氏)
SAP ERPがOracleデータベースを必要としなくなった
「SAP Business Suite powered by SAP HANA」の発表は、インメモリデータベースで基幹業務を動かすという技術的なインパクトに加え、SAP Business SuiteがOracleデータベースを必要としなくなった、という面でも注目されます。
SAPの基幹業務向けアプリケーションのバックエンドデータベースとして最も使われていたのはOracleであり、顧客はSAPの業務アプリケーションを利用する際にはSAPとオラクルに(あるいはオラクル以外のデータベースベンダに)それぞれライセンス料を支払う必要がありました。
しかし「SAP Business Suite powered by SAP HANA」の登場によって、SAPは自社だけでデータベース、ミドルウェア、アプリケーションをすべて顧客に提供できるようになりました。これはSAPにとっても、オラクルにとっても大きな変化であることは間違いありません。
SAPはサイベースの買収とSAP HANAの提供により、昨年5月に「データベース市場への本格参入」を明確に宣言しています。SAPとオラクルは、これからデータベース市場や基幹業務アプリケーション市場でいままで以上に競合することになるでしょう。
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