クラウド専業のテラスカイとサーバーワークスが提携した理由は、先行者利益の喪失と人材採用への危機感
テラスカイとサーバーワークスは、どちらも独立系でクラウド専業のシステムインテグレーターです。テラスカイはSalesforce.comの、サーバーワークスはAmazonクラウドのシステムインテグレータとして高い知名度を持ち、急成長してきました。
この両社は9月4日、資本提携を発表しました。両社とも第三者割当増資を行い、テラスカイはサーバーワークス株の34%を、サーバーワークスはテラスカイ株の11%をそれぞれ持ち合い、テラスカイ代表取締役社長 佐藤秀哉氏はサーバーワークスの取締役に就任。実質的に2社でテラスカイグループを形成することになります。
Salesforce.comやForce.comは強力なプラットフォームですが、大規模データのバッチ処理やデータストレージ機能は苦手です。一方でAmazonクラウドはそれらの処理を得意としています。それぞれのクラウドに強みを持つテラスカイとサーバーワークスが優れた補完関係を目指して提携することは、説得力を持って迎えられるでしょう。
しかし両社の関係が業務提携よりもさらに踏み込んだ資本提携になった背景には、単なる補完関係の実現だけではなく、将来を見越した理由があります。クラウド専業として成長してきた両社が、なぜ単独の成長ではなく資本提携を選んだのでしょうか。
クラウドにおける次の先行者利益とは「複数クラウドへの強み」
両社が資本提携にまで踏み込んだ主な理由の1つは成長への危機感です。両社ともに他社よりも先行してクラウドへ取り組んだことで、急増するクラウド案件とともに企業の成長を実現させてきました。しかし、その先行者利益がこの先もずっと続くわけではないだろうと、佐藤社長。
「いまは私どものエンジニアは売り切れているくらいの状況です。多くの他社さんはまだクラウドエンジニアを育てているところですから。しかしこの先、クラウドができるエンジニアが増えてくれば、過当競争や値下げなども起きてくるでしょう。そうすると、複数のクラウドが活用できること、これが次のクラウドSIにおいて先行者利益になる。ここは大石社長と一致しています」(佐藤社長)
この先も成長し続けるには、複数のクラウドで強くならなければならないという共通の考えが佐藤社長、大石社長にあるようです。クラウド専業で成長してきた企業の次の打ち手がこれだと。
資本提携に踏み込んだもう1つの理由は、人材獲得です。
労働集約型のビジネスであるシステムインテグレーションにおいて、成長には優れた人材の採用が不可欠ですが、よりよい人材採用のためにはさらなる知名度や規模の拡大が求められています。大石社長は、現時点で人材獲得に苦労していることを率直に明かします。
佐藤社長も次のようにコメントしています「リクルーティングには困っています。まだやはり『寄らば大樹の陰』的な傾向が日本には強いようで、(提携により)少しでも安心してもらえる組織にしたかった」
テラスカイは現在120名、サーバーワークスは34名。両社は3年後に合算の売上げで現在の約3倍にあたる50億円を目標に掲げています。佐藤社長はそのためにシステムインテグレーションだけでなく、クラウド上のアプリケーションマーケットでサブスクリプション型のソフトウェア販売にも力を入れ、「できれば売上比率の50%くらいまでにしたい」と語りました。
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