米オラクル、マイクロソフトと提携、セールスフォース・ドットコムと提携、ネットスイートと提携し、Oracle Database 12cを出荷開始。一連の狙いはクラウド市場での存在感
先週から今週にかけて、米オラクルは次々に大きな発表を行いました。これらを並べてみると、同社がクラウド市場で存在感を示すことを強く意識して行われたことが分かります。
先週行われた一連のクラウドに関する提携発表
日本時間の6月25日に行われたのが、マイクロソフトとのクラウドに関する提携発表です。Windows AzureのAzure仮想マシンとWindows ServerのHyper-Vを、Oracle DatabaseやWebLogic Serverの動作環境として認定する、というのがその骨子。
オラクルにとって、これは自社のソフトウェアが利用できるクラウドの選択肢を広げることとなります。マイクロソフトにとっては、ライバルのAmazonクラウドがすでにOracle Databaseの動作環境として認定されていますので、そのライバルに対抗する意味合いを持っています。
翌6月26日に行われた発表が、セールスフォース・ドットコムとの提携。セールスフォース・ドットコムはクラウド基盤にExadata、Oracle Linux、Oracle Database 12cを採用。そしてオラクルは人材管理のFusion HCM、およびFinancial CloudなどのクラウドサービスとSalesforce.comのサービスを統合する計画を発表しています。
この提携はオラクルにとって、自社の技術がクラウド基盤を構築できる品質にあるということを明確に証明するものだといえるでしょう。
さらに翌6月27日には、ネットスイートとの提携を発表します。オラクルの「HCM Cloud」と、ネットスイートのERPを緊密に連携させていくというもの。ちなみにネットスイートはすでにオラクルのExadataを採用済みです。
クラウド対応データベース、Oracle Database 12c出荷開始
そして今週、7月2日にクラウドの「c」を冠した新製品「Oracle Database 12c」の出荷開始が発表されました。
Oracle Database 12cの最大の特徴は、「コンテナ」の中に複数のデータベースを格納できる、マルチテナント機能を備えていることです。
クラウドでは、多数のユーザーがそれぞれシステムごとにデータベースを利用します。いまはデータベースごとにそれぞれインスタンスを立ち上げる必要があるため、通常はクラウドの中には何千、何万ものデータベースインスタンスが起動しています。
Oracle 12cでは、それを1つのインスタンスで複数のデータベースをサポートすることにより、これまでインスタンスごとに重複し、非効率だったOSやキャッシュが占めていたメモリ領域やプロセッサの利用率などを統合してマネジメントでき、効率よく利用できるようになります。
また多数のデータベースを一括してバックアップ、リカバリができるなど管理の手間も削減できるようになります。
オラクルのクラウド市場における存在感は
一連の提携と発表はすべてクラウドがキーワードになっており、オラクルが意図的にこれらをまとめて発表することでインパクトを狙ったことは間違いないでしょう。
先行するAmazon Web Servicesやセールスフォース・ドットコムなどと比べれば、オラクルのクラウド市場における実績はほとんどないに等しい状態です(もちろん同社のパッケージソフトはクラウドでたくさん使われてはいます)。ここから、パッケージ市場における自社の強みを活かした提携関係をテコにして一気に存在感を示そうとしているオラクルの戦略。果たして、1年後にどれだけ存在感を示すことになるでしょうか。
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