OpenStackとはコードでありコミュニティである。ベンダーロックインには「ノー」を。OpenStack Day Tokyo 2013基調講演
オープンソースとして開発されているクラウド基盤ソフトウェア「OpenStack」をテーマにしたイベント「OpenStack Day Tokyo 2013」が3月12日に都内で開催されました。
基調講演にはOpenStack Foundationの共同設立者であるマーク・コリア(Mark Collier)氏が登壇。会場は立ち見が出るほどの盛況で、日本でOpenStackへの注目度が高まっていることが感じられました。
この記事ではその基調講演の模様をダイジェストで紹介します。
OpenStackとは何か?
基調講演に先立ち、経済産業省 商務情報政策局 情報処理振興課長 江口純一氏と、総務省 情報通信国際戦略局 融合戦略企画官 仲村祐治氏が挨拶に立ち、ともにオープンソースのクラウド基盤への期待を語りました。こうしたイベントに官公庁からゲストが登壇することは珍しいことと言え、単なるデベロッパー向けのイベントではなくビジネスを見据えた展開を感じさせます。
基調講演に登壇したのは、OpenStack FoundationのCOOで共同設立者のマーク・コリア氏。
OpenStackはコードでありコミュニティでもあります。会場のみなさんもそのコミュニティの一部です。
コードとしてのOpenStackは、コンピュートやネットワーキング、ストレージといったもののリソースの上にAPIをのせて自動化し、それらをAPI経由で管理できるようにしたものです。管理のためのダッシュボードもあります。
ライセンスはApache 2.0のオープンソースで、これがOpenSatckの成功に大きく寄与しています。
これらがOpenStackの基本的なコンポーネントです。
従来のプロプライエタリなソフトウェアと違うところとして、タイムベースのリリースサイクルになっていて、1年に2回新しいリリースを出します。年に2回デザインサミットもあり、デベロッパーとユーザーが一体となって次のバージョンについて話し合います。
すでにPayPalやインテルが利用
OpenStackを使った事例を紹介しましょう。
PayPalは、2012年に1分ごとに2万6000ドルものモバイル支払いを処理した。社内のチームはOpenStackを使ってデプロイメントを管理していた。
インテルは社内に69のデータセンターと7万5000台以上のサーバを保有。OpenStackはこのサーバ群のプロビジョニングの時間を激減した。
OpenStackのコミュニティには人々がいろんな国から集まってきており、先日テキサスのオースティンに運用経験がある人たちが集まって、5日間で運用ガイド(Operation Guide)を作成しました。
これは2週間前に書き終わり、1週間前に公開され、ツイッターやブログで宣伝しただけですがオンラインで2000人以上がダウンロードしています。このような知識を持っていて、それを共有しようとしたコミュニティを、とても誇りに思います。
OpenStackの背後に誰がいるのか?
OpenStack Foundationは、OpenStackを守り、力づけ、促進する非営利団体です。OpenStackはもともとRackSpaceが開発したものですが、成功のためには独立が必要だとしてOpenStack Foundationを設立しました。8000人以上の個人やグローバルなIT企業がスポンサーになっています。
どれだけOpenStackに興味が集まっているのでしょうか? OpenStackデザインサミット、前回はサンディエゴで1400人近くが参加し、次回はポートランドで2000人以上の参加者が来るといわれています。
Google TrendsでCloudStackと比較しても、OpenStackの言及は増えています。
毎月どれだけデベロッパーがコントリビュートしているか? これは非常に重要なことで、コミュニティとしてソフトウェアを開発していくうえで、やはりデベロッパーの数は重要だと思います。
OpenStackは単なるソフトウェアでもコミュニティでもベンダーコンソーシアムでもなく、もっと大きなものを作ろうとしています。それはクラウドでコミュニティと一緒にエコシステムを作る、といういうこと。
ほかのクラウドでは、通常一社が支配的に作っていますが、我々は100社以上の企業が関わっています。これがほかのクラウドソフトウェアと違うところであり、プラットフォームのエコシステムを作ることで、誰にとっても価値のあることです。
ベンダーロックインにノーと言いましょう。
オープンな方が遙かに楽しい。ユーザーを支援することでお金を儲ける方がいいでしょう。そして、フリーダムに対してイエスと言ってほしい。自由を信じるのであれば、OpenStackにはフルタイムの仕事もあるので、興味がある方はぜひ連絡を。
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