フラッシュメモリがITインフラを大きく変えていく。使いこなすためにアプリからインフラまで見渡せる人材を。ガートナージャパン
いまから3年後の2016年には、企業システム向けSSDの平均記憶容量は1テラバイトを超え、2012年からの5年間でメモリデバイスの容量単価は5分の1になる。
4月24日から今日まで開催中のガートナージャパン「ITインフラストラクチャ&データセンターサミット2013」、初日のセッション「メモリの技術革新がもたらすITインフラとストレージの進化」では、リサーチ ディレクター 鈴木雅喜が、フラッシュメモリによるITインフラの大きな変化がこれから起きるとして、その変化にいまから備えるべきだと訴えました。
その大きな変化を引き起こす要素こそ、冒頭に記したフラッシュメモリを用いたストレージ容量の増大と単価の下落。特にSSDで1テラバイトを超えると多くの企業で業務用のデータベースがまるごとSSDに載ってしまうため、これまでデータベースの性能を出すために必要だった追加機能などが不要になり、システムに大きな変化を引き起こすといいます。
フラッシュメモリ関連は3つの勢力に分けられる
フラッシュメモリおよびその周辺を含め、メモリ活用に向けたアプローチを提供するITベンダは3つの勢力に分けられると鈴木氏。
1つ目はデータベースベンダを中心とする勢力で、インメモリデータベースによるアプローチ。もう1つはストレージベンダを中心とする勢力で、従来のHDDをベースにした製品を主力にしつつも、そこにフラッシュメモリの技術を組み込む、あるいはフルフラッシュの製品に取り組んでいます。
そして3番目の勢力が、新興ベンダを中心とした勢力。最初からフラッシュに最適化したテクノロジーをベースに製品を提供しようとしています。
この3つの勢力はいずれも、スピードと効率性を大幅に改善するという目標を掲げており、ユーザーはそれぞれの勢力のアプローチに閉じて検討するのではなく、横串をさして検討するべきだと鈴木氏。
ベンダごとに使われるテクノロジは異なっており、サーバのメモリを活用するインメモリコンピューティングや、サーバにフラッシュを搭載するサーバサイドフラッシュは処理に近いところでメモリ技術が使われるため高速だが、効果は特定のアプリケーションが対象となります。
一方、ストレージにフラッシュを搭載するケースでは、ストレージは高性能高効率になるがサーバに入れるほど性能が出るわけではなく、一方フルフラッシュストレージはシンプルではあるがまだ実績が少ないといったメリット、デメリットがあります。
フラッシュメモリの導入にはこうしたインフラからアプリケーションまでにかかわる特徴を広く理解するべきで、「会場のみなさまがインフラの技術者だとすれば、データベースやアプリケーションの担当者とも密なコミュニケーションをして導入を検討するべきだと思います」(鈴木氏)
アプリからインフラまで見渡せる人材を
鈴木氏は、インフラ部門がより能動的で戦略的な役割を担うような変化を、フラッシュメモリの進化が促すと説明します。
「これまでインフラは要求がきてからシステムを構成することが仕事でした。しかし仮想化の登場によって、あらかじめリソースを用意しておくように変わってきました。でもそれでいいのですかと。
例えば、インフラ部門の競合はAmazonクラウドだったりするのです。だからもっと外へ出て、こういう技術をこう使いましょう、といった能動的な役割にならなければなりません。そういう中でフラッシュメモリを考えたとき、Amazonではこれができるけど、社内でフラッシュメモリを使えばそれ以上にこれができる、だったらなぜ社内でフラッシュメモリを使わないのか、といった話をしてもいいと思います」(鈴木氏)
鈴木氏は、ガートナーの仮説として「2016年までに企業のシステム向けストレージを自社で購買する日本の大企業の30%がフラッシュメモリを活用し、コスト性能比を改善する」と述べた上で、まだフラッシュの使いこなしを提案できる人材がそれほど多くないことなどにより、30%という保守的な数字になっていると説明。
データベースからアプリ、インフラまでを見渡せる人材を育成し、ぜひフラッシュメモリを使いこなしてほしいと呼びかけてセッションを締めくくりました。
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