これまでの汎用サーバとは異なる進化の道を選ぶ。HPの「Moonshot System」
今後4年間で新たに50万台のサーバが導入されるとすると、火力発電1基分もの電力が必要とされる。日本ヒューレット・パッカードは4月19日、この課題に立ち向かう「HPからの重要な発表」として同社の新ラインナップとなるサーバ「HP Moonshot System」を発表しました。
Moonshot Systemは、同社が以前から取り組んできたProject Moonshotから生まれた最初の製品です。今回発表されたMoonshot 1500 ChassisはAtomプロセッサを搭載しストレージやNICも備えた超小型のカートリッジ型サーバを45台収容可能。
省電力のサーバを高密度に収容したことで、従来のサーバより80%ものスペース削減、89%の電力削減、97%のケーブル削減になると同社では説明しています。
日本ヒューレット・パッカード 常務執行役員 杉原博茂氏は、異次元の省エネルギーとキャパシティーを実現したMoonshot Systemが、日本が直面する電力不足問題に貢献すると新システムへの意気込みを示しました。
汎用サーバの進化とは異なる道を選んだ「Moonshot System」
ヒューレット・パッカードがMoonshot Systemで狙っているのは、単に省電力高密度なサーバを作ることではありません。これまでのサーバは、どんな用途でも性能を発揮できる汎用サーバとして進化してきました。そのおかげで1台のサーバがソフトウェアによってWebサーバになり、ファイルサーバになり、アプリケーションサーバになり、データベースサーバにもなりました。
現在は、その強力な汎用サーバを仮想化によって切り分けて効率的に利用することが主流になっています。しかし汎用サーバとして高性能化するほど、電力あたりの性能をあげることは難しくなっています。
Moonshot Systemはこの汎用サーバとしての進化を改め、ソフトウェアの用途ごとに特化したサーバを開発することで、電力当たりの性能を最適化することを目指しているのです。同社はこれをもってMoonshot Systemを「Software Defined Server」と呼んでいます。
今回発表されたAtomプロセッサを搭載したサーバカートリッジは、WebホスティングなどのWebサーバ用途を想定したもの。Atomプロセッサを搭載したのは、この目的であれば非力なプロセッサでも十分に要件を満たしつつ省電力を実現できるためです。
同社はインテル、ARM、AMD、テキサスインスツルメンツなどのチップベンダ、SUSE、Red Hat、Ubuntu、Cloudera、MapR、Hortonworks、Datastax、Vertica、Citrixなどのソフトウェアベンダとパートナーシップを組み、DSPやFPGAなどを用いてさまざまな用途にフォーカスしたカートリッジ型サーバを今後開発し、発表していくことを明らかにしています。
これらのパートナー企業の名前を見ると、HadoopやCassandraといった大規模分散処理に適したソフトウェアがまずターゲットになっていることが伝わってきます。
ヒューレット・パッカードや同社が買収してきた企業は、競合他社よりもつねに高性能な汎用サーバを開発、販売するベンダとして競争を勝ち残ってきました。その同社が、汎用サーバの進化とは異なる道を選んだ「Moonshot System」を発表し、重要な製品として位置づける。このことこそ、同社が「重要な発表」とした意味だといえるでしょう。
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