EPUB 3、今夏以降にISO国際標準となる見通し
電子書籍のフォーマットとして注目されているEPUB 3は、IDPF(International Digital Publishing Forum)と呼ばれる業界団体が策定した業界標準(デファクトスタンダード)です。
このEPUB3を、世界各国の代表から構成されるISO/IEC(国際標準化機構/国際電気標準会議)による公的標準(デジュールスタンダード)にする動きが始まっています。EPUB 3がISO/IECの標準になることで各国政府の調達要件を満たしやすくなり、また教科書や図書館などの標準規格を重視する分野への採用が進むと考えられているためです。
日本はこの国際標準化推進において重要な役割を果たしており、その現場で活躍しているJEPA(日本電子出版協会)技術主任 村田真氏が、1月18日に開催された「EPUB 第19回 EPUB国際標準支援者向け報告会」で現状と見通しについて報告しました。
村田氏はIDPFにおいてEPUB 3を策定する際にも日本からの代表として縦書きやルビを含むさまざまな国際化対応をリードし、現在はISOでそのEPUB 3のデジュールスタンダード化に向けた活動を行っています。
2月に提案、夏以降に確定か
村田真氏。今はISOの手続きを一生懸命しらべるのにかなり時間を使っている。
予定では、1月20日くらいにEPUB 3を技術仕様(Technical Specification)にする提案が韓国からFirst-trackで提出されます。いまそのための調整を韓国としています。それがJTC1にとどいて、SC34にアロケートされます(SC34は村田氏が所属するSGML、OOXML、ODF、RELAX NG、Schematronなどを担当するグループ)。
SC34の議長国は韓国、幹事国は日本です。JTC1の一般論では、いちばん偉いのは幹事国なんですね。非常に権限がある。
1月20日に提出されると、2月中旬から投票が開始され、5月中旬くらいに締め切り。
6月頭にパリで投票コメントの審議があります。この議長は幹事国(日本)の指名です。ここで議論したことについて議長がコンセンサスを宣言して結論とする、というのが建前です。
コメントの審議によって、こういう方向で修正しようとなりますが、実際にエディタが作業するにあたり、細かい矛盾などがでてきても対応できるようにある程度幅をもたせたコメントにするのがJTC1の方針です。
そしてちゃんとした技術使用のテキストができあがるのが8月か9月か10月か。そのあとISOの出版プロセスは遅いので、さらに待つことになるかもしれません。
並行してEPUB 3のバグフィックスも
これと並行して、IDPFではEPUB 3の仕様のバグフィクスもやります。EPUB 3.01とかどういう番号になるかはまだ決まっていませんが、もうイシューリストはあります。
それからISOに対して日本からコメントを提出するべきかどうか、4月にオープンな場で審議したいと思っています。例えば縦書きについて日本としてまとまった意見を出すと、それなりの重みはあると思います。
また、ISOでの標準化の過程でEPUB 3の中身を見直すことになったときには、IDPFでのバグフィクスのところへ反映させます。なので、ISOではEPUB 3に対する大変更はないはず。ただ、ただ一見小さいが影響が大きな変更はありえるかもしれません。
国際標準化への小口協力金の経過報告
Publickeyでは、このEPUB 3国際標準化の作業のための日本の予算が資金難にあることから、小口の協力金を募ってきました。
- EPUB 3のISO国際標準化作業で、日本が資金難による離脱の可能性。JEPAが支援募金を呼びかけ - Publickey
- EPUBの国際標準化支援、個人の小口協力者をPublickeyで募ります
- EPUB国際化支援小口協力金、目標達成のお礼と、二次募集開始のお知らせ
前述の会議では、村田氏の報告に続いてPublickey新野がこの小口協力金についての経過報告を行いました。1月17日現在、93人にご協力いただき81万5000円の売り上げがありました。以下は、報告に使ったスライドの一部です。
小口協力金の募集は3月末までの予定で、引き続き行っております。協力者には、どのような経緯でEPUB 3が国際標準を目指そうとしているのか、これまでの経緯が詳しく解説された電子書籍(PDF)が提供されます。
売り上げ金額とほぼ同額をPublickeyがJEPAに寄付させていただきます。「ほぼ同額」というのは、売り上げにかかる手数料、税金などの全額もしくは一部をPublickeyが負担する予定であるためで、これによってPublickeyが利益をあげるつもりはないことをあらかじめお約束します。
購買時に入力いただいたメールアドレスはJEPAに渡します。今後もJEPAによる報告会などがありましたら、メールアドレスを通じて報告会の案内などをさせていただく予定です。
(追記 2013/1/23:「国際標準(デジュールスタンダード)」を「公的標準(デジュールスタンダード)」に修正しました)
(追記 2013年4月18日 :募集を3月末で締め切り、約87万円を日本電子出版協会に送金しました(報告記事)。
あわせて読みたい
フラッシュストレージ市場が日本でも本格化。Violin Memory、Pure Storageが相次いで国内参入
≪前の記事
Hadoopはビッグデータの汎用プラットフォームであり、行く先はグーグルが示している