プライベートクラウドでコスト圧縮だけでなく業務標準化の効果。博報堂アイ・スタジオにおけるクラウド活用例~Cloud Show Japan 2013

2013年9月17日

プライベートクラウドを選択する企業は、パブリッククラウドと比較して何を重視し、どのように活用しているのでしょうか。

9月12日に都内で開催されたCloud Show Japan 2013のセッション「広告業界でのクラウド活用事例」では博報堂アイ・スタジオの梁取雅夫氏が、物理サーバの運用からパブリッククラウドの利用を経てプライベートクラウドの構築へと至った理由、その効果について解説しています。

セッションの内容をダイジェストで紹介しましょう。

広告業界でのクラウド活用事例

博報堂アイ・スタジオ システム開発部 部長 梁取雅夫氏。

私たちの取り組みは最先端の取り組みとはちょっと違うと思っていますが、とはいえ後発組の、少し慎重に取り組んでいるわれわれが、どんなことをしているのかという観点で見てもらえればと思います。

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私は昨年度から博報堂アイ・スタジオのシステム開発部に籍を置いて、プライベートクラウドの導入をさせていただいています。

ここでは、博報堂アイ・スタジオがどんな会社か、そしてプライベートクラウドをなぜ選択したのか。そのあと、プライベートクラウドをCloudStackで構築している使い方、事例などを紹介したいと思います。

広告案件に対応したサーバ運用

博報堂アイ・スタジオは「世界とつながるDigital Experience創造企業」というコンセプトでやっています。制作したものとしては、サントリー天然水の「リサイクループ」というバナー広告や、iPhoneアプリやAndroidアプリなどもやっています。

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そんな会社がサーバをどういう風に使っているのか。基本的には、制作に関わった案件のサーバ運用です。要望が多いのは、ソーシャルとの連係、会員サイトの運用などです。

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サーバ運営は2000年から行っていますが、物理サーバだけではまずいよね、ということで2009年からパブリッククラウド、2012年からプライベートクラウドもやっています。

プライベートクラウドの構想は以前からあったのですが、案件での運用が始まったのは2012年10月で、直近2年の新鮮な情報というか、なまなましいお話が伝えられたらと思っています。

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多様なクライアントの要望、要件定義と並行して制作進行

そもそもなぜプライベートクラウドなのか、その導入前の状況をお話させていただきます。

自分たちの業務でどんなことが多いかというと、多数のクライアントがいらっしゃって、それぞれ文化が異なっているので多くの要望が寄せられます。

具体的にはセキュリティ基準が異なっていて、セキュリティ重視のお客様から、コストパフォーマンスを優先してほしいお客様までいらっしゃいます。

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広告出向中の案件が多く、通常の案件のランニングに追加となり、多額の出稿料がかかっていて、そういう状況下でサーバが落ちてはいけないというプレッシャーがあったりします。だから手堅く後発組になったりするのですが。

あとはクリエイティブディレクターが、サーバやシステムのことが分からないので丸投げの案件が結構きたり、12月や夏のボーナス商戦はみなさん出稿したがるのでピークが重なり、急な依頼も多いです。

要望を分析してみたところ、やはりセキュリティが一番多くて、あとは出向中にサーバが落ちるのは本当に怖いので可用性です。

例えば、お客様が「Yahoo!のブランドパネルに出稿しますが負荷は大丈夫ですかね」といった話を急にされることが普通にあって、そういった案件では物理サーバの調達がそもそも間に合いません。

クリエイティブディレクターはこだわりがすごく強く、デザイナーも最後の最後までクリエイティブを直すことがあって、システムの制作と並行して要件確定がつねに揺れ動くという中で制作を進めています。

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なので、2000年の物理サーバの頃は、機器の調達に時間がかかるので業者とネゴっておくくらいしかできなくて。時間の早い業者を確保しておくとか。

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とはいえ時代の流れで、パブリッククラウドの利用によるメリットの還元をクライアントにできないかと、2009年から考えていました。

2009年からパブリッククラウドも利用開始

このとき、案件全部をパブリッククラウドにはできませんでしたが、とある案件で試算したところ、60%くらいコストは落ちていました。機器はボタン1つで調達できるので、速いですよね。

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物理サーバとパブリッククラウドのコスト構造の比較をしてみました。3カ月くらいのキャンペーンで考えてみると、初期費用が大幅に減るのは使う前から分かっていました。しかし人件費は減らないよねと。

自分たちの運用形態を守りたいということでいままで同様の構築、運用をするとパブリッククラウドでも人件費は減らず、この部分の圧縮はなかったという結果になっています。

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もうクラウドに流れない訳がない、という感覚はありました。調達時間もコストも圧倒的じゃないかと。一方で、個人情報、セキュリティを重視するクライアントがいて、それから当時はパブリッククラウドにも大きな事故があって、そういうことを想定すると、物理サーバとパブリッククラウドの間くらいのものがあるといいよね、という話になりました。

セキュリティのカスタマイズ、それから公共団体関係ではデータの保管場所も大事になっているので、パブリッククラウドには限界を感じて、プライベートクラウドを模索し始めます。

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プライベートクラウドの導入で業務も標準化へ

2012年からプライベートクラウドの利用を開始します。

これで個人情報を扱えるようになったというのと、構築フローが変わりました。

パブリッククラウドではアカウントの引き継ぎなどがあってテンプレートなどの集約がしにくかったのですが、プライベートクラウドではテンプレートの集約ができるようになりました。

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現在、プライベートクラウドの初期に用意したサーバはほぼ完売しているような状態で、主軸がプライベートクラウドに移ったのかな、という感覚を持っています。

プライベートクラウドのコストは高いのかというと、トータルで見ると構築の時間がテンプレートで効率化されていることで、資産上はさらに20%圧縮されるということになりました。

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また提供時間もパブリッククラウドよりもさらに速くなりました。

プライベートクラウドの導入はテンプレートによる業務の標準化が副産物となったのですが、これは非常に大きな効果があったかなと思います。

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最初は自分たちのクラウドを作ろうと始めたのですが、実は業務改善できたという結果がでて、主軸がプライベートクラウドへ移ったことでクライアントにも喜んでいただいているという感覚です。

またメリットとして、クラウドの知識が構築レベルで潤沢になり、パブリッククラウドを使うときにも役に立ちます。物理層からクラウドを触れるので、例えばディスクI/Oがボトルネックの時にはFusion-IOを導入するなどもできます。

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現状、インスタンス台数で300台強が稼働していて、年内にプライベートクラウドサービス単体で500台を目標に進めています。

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Junichi Niino(jniino)
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