オラクルとマイクロソフトがクラウドで戦略的提携。ただしAWSが共通の敵というわけではない
米マイクロソフトと米オラクルは提携を発表、Oracle DatabaseやWebLogic Serverの動作環境としてマイクロソフトのHyper-VやWindows Azureが正式に利用可能となります。
この提携において両社に共通する狙いは、クラウドにおける存在感の向上です。プレスリリースから引用します。
Today, we are together extending our work to cover private cloud and public cloud through a new strategic partnership between Microsoft and Oracle. This partnership will help customers embrace cloud computing by improving flexibility and choice while also preserving the first-class support that these workloads demand.
本日マイクロソフトとオラクルの両社は、プライベートクラウドとパブリッククラウドにおける新しい戦略的パートナーシップを通して、協力関係を拡大することとなりました。このパートナーシップによって、お客様はクラウド推進の一助を、より高い柔軟性と幅広い選択肢とともに最善のサポートを提供することなどから得ることになるでしょう。
マイクロソフトは今年の4月に発表した「Windows Azure仮想マシン」で、IaaS型クラウドサービスを開始し、サードパーティのパッケージソフトウェアを利用することが可能になりました。その基盤となっているのがHyper-Vです。そしてHyper-VはWindows Serverに組み込まれており、Windows Serverで構築されるマイクロソフトのプライベートクラウドの基盤でもあります。
つまりこの提携を技術面から見ると、オラクルがHyper-Vへの正式対応を行うことで、マイクロソフトのプライベートクラウド、パブリッククラウドの両方に対応した、と見ることができます。
このことはプレスリリースでも次のように強調されています。
As part of this partnership Oracle will certify and support Oracle software on Windows Server Hyper-V and Windows Azure. That means customers who have long enjoyed the ability to run Oracle software on Windows Server can run that same software on Windows Server Hyper-V or in Windows Azure and take advantage of our enterprise grade virtualization platform and public cloud.
このパートナーシップの一部として、オラクルは同社ソフトウェアのWindows Server Hyper-Vに対する認定と対応を行う予定です。すなわち、すでにWindows ServerでOracleを実行されてるお客様は、まったく同じ環境をWindows Server Hyper-V上で、あるいはWindows Azureで利用でき、エンタープライズレベルの仮想化プラットフォームとパブリッククラウドの利点を得ることができるのです。
マイクロソフトとオラクルではクラウドにおける狙いが異なる
マイクロソフトにとって、これはクラウド市場で先行するAWS(Amazon Web Services)に対抗するための戦略的提携であることは疑いようがありません。AWSに追いつくべく、AWSの優れた機能であるAmazon EC2をWindows Azure仮想マシンという新機能で組み込み、さらにそこで人気のあるサードパーティのアプリケーションもこのような提携で取り込んでいこうとしています。
これまでもマイクロソフトはOfficeソフトで先行するロータスに対して、Webブラウザで先行するネットスケープに対して、自社製品に機能的に同じものを取り込んで追いつき、それを拡張することで追い越してきました。いままさにクラウド市場でAWSの機能を取り込み、追いつこうと必死になっているフェーズなのでしょう。
一方のオラクルは、AWSであろうがWindows Azureであろうが、どのクラウドが勝とうともOracle製品がそこで動けばいい、という戦略を採っているように見えます。
そもそもWindows AzureにはOracle Databaseの競合製品であるSQL Serverがサービスとして組み込まれているライバルのホームグラウンドです。そこに今回の戦略的提携で「Oracle Databaseあります!」という旗を立てさせたわけですから、オラクルにとってこの提携は、クラウド基盤の上のミドルウェアで支配的になる、という戦略の成功へ確実に一歩駒を進めたといえます。
クラウド市場での存在感を高めたいという両社の思惑は、狙っているレイヤが違うからこそうまく今回の提携に結びついたのではないでしょうか。
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