クラウドのパートナーとして成功するには、より上位レイヤを狙うべき。Amazonクラウドのパートナー部門トップに聞く
Amazon Web Services(AWS)のTerrence Wise(テレンス・ワイズ)氏は、AWSにおけるチャネルパートナー部門のトップです。Amazonクラウドとソフトウェアベンダーやシステムインテグレータなどとのエコシステムを構築し、成功へ導くミッションを負っています。
ワイズ氏に、クラウドのシステムインテグレータとして成功する方法と、そのために必要な能力とはどんなものなのか、インタビューを行いました。
クラウドにおけるプロジェクトの平均価格とは
──── グローバルな視点から見て、日本のクラウドパートナーの特徴があれば教えてください。
ワイズ氏 グローバルでも日本でも似ているのは、成功しているパートナーは顧客にフォーカスしている、というところです。これは北米でもラテンアメリカでも日本でも同じです。
日本のパートナーで印象的なのは、例えばAmazon Redshiftのような新サービスでも、ビジネスベースで受け入れていくスピードが速く、情熱にあふれている、ということです。
──── クラウドを利用すると、オンプレミスに比べて案件の単価は安くなっていきます。パートナーはこれをどう乗り越えて売上げを増やしていくべきでしょうか?
ワイズ氏 インフラを安く提供するのではなく、顧客のビジネスビジネスニーズを満たそうとフォーカスしているパートナーが成功しているように思います。ビジネスソリューションのような、スタックの上のレイヤであれば、より顧客にとって価値があり、パートナーのビジネスにとっても有益なものになるでしょう。
これはグローバルにおけるクラウドでのプロジェクトの平均価格を示しています。
AWSはインフラを提供しますが、パートナーによってはそれを顧客に再販するところもあります。またインフラの管理、アプリケーションの管理などを提供するパートナーもあるでしょう。(資料の下から「AWS Services」「Managed Infrastructure Services」「Managed Application Services」の部分)
SIのコアビジネスはその上、ビジネスアプリケーションの実装やマイグレーションです。ここに大きなビジネスの機会があるでしょう(資料のApplication Implementation & Migration Services」の部分。500万円から1億円+アプリケーション開発費とある)。
さらに戦略面でのアドバイスやコンサルティング。つまりどんなアーキテクチャがよいのか、どんなアプリケーションがいいのか。それによってROIやTCOがどうなるのかといった相談に乗るようになれば、これには幅がありますがプロジェクトごとに500万円から2500万円、そして数億円の規模のビジネスになります。
エンタープライズ全体でクラウドへの移行に取り組むことになれば、これらのプロジェクト単価の10倍から50倍の規模になることが見込めます。
パートナーにとって、取り組むレイヤが上へ行くほど、そしてクラウドへの移行に取り組むほどにビジネスの機会は広がっていくのです。例えばより上位のレイヤの1つとして、ビッグデータへの取り組みなども大きな価値を生むビジネスになるでしょう。
──── そうしたパートナーになるために、どのようなスキルが必要ですか?
ワイズ氏 テクニカルな面では、AWSを理解する必要があります。AWSとオンプレミスでは、似ているところもありますが、もちろん違うところもあります。
大きな違いの1つはアーキテクチャでしょう。いままでアプリケーションは1つのデータセンターにデプロイするものでしたが、クラウドでは可用性を高めるために、複数のアベイラビリティゾーン、複数のリージョンへの展開などを含め、ビジネス継続性のための構成や分散アプリケーションをどう実現するか、そして適切なインスタンスタイプなどを選択できるようになります。
また、企業文化の面でも、いままで物理的なサーバがあって操作できましたが、AWSにインフラを任せて、実際に触ることはできない、ということに慣れていただく必要があるでしょう。
そのためにいちばん簡単な方法は、実際にAWSを使い始めていただくことです(笑)
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