国内におけるアジャイル開発、どのプラクティスがいちばん使われている? IPAが調査報告書を公開
国内でアジャイル開発を普及させることを目指し、IPAはアジャイル開発の国内での活用事例をまとめた「アジャイル型開発におけるプラクティス活用事例調査」として、調査報告書、およびプラクティス活用のためのリファレンスガイドなどを公開しました。
IPAがこのような調査報告書を公開する背景として、「国際競争力強化のため、世界的に主流になっているソフトウェア開発手法であるアジャイル型開発に日本でも取り組む必要がある。しかし、現状、日本では「普及が遅れており、ようやく認知され始めた」段階であるとされている」と調査報告書に記述されています。
報告書では、国内の26のアジャイル開発事例についてその状況をまとめることでナレッジの集積をはかるとともに、今後の普及に向けた提言を記しています。
日次ミーティング、ふりかえり、イテレーションが国内3大プラクティス
国内でアジャイル開発の普及が阻害されている要因として、受託開発であること、契約などコミュニケーションの壁があること、技術者がユーザー企業に所属していないこと、の3つが挙げられています。
この現状を認識したうえで、国内のプラクティス利用例が調査報告書で紹介されています。
今回調査対象となった26の事例で、もっとも多く行われていたプラクティスは、「日次ミーティング」「ふりかえり」「イテレーション」が上位3つ。続いて「イテレーション計画ミーティング」「紙・手書きツール」「タスクボード」「バーンダウンチャート」などがありました。
2009年度調査と比較すると、スプリントバックログや紙・手書きツール、タスクボード、ユニットテストの自動化などの適用率が上昇したと解説されています。
「日次ミーティング」プラクティスの実態は、チームの情報共有のためにとれる時間がほとんどないという課題があり、それによって深刻な状況を招くことがないよう、解決策として短時間で済むように必要な情報に絞って必ずしも朝の時間帯にこだわらず、チャットツールなども活用して日次ミーティングを開催する、と説明されています。
「ふりかえり」プラクティスでは、イテレーションを繰り返す中で最適な開発プロセスを最初から実践することはできない、という課題に対し、改善策をチームで考え、実施する機会を設けるために振り返りを実施。留意点として各自の意見をうまく引き出す、糾弾する場にしない、といったことが挙げられています。
短納期に使えるプラクティスとは?
さまざまなプラクティスの活用のポイントもまとめられています。例えば短納期に対しては、ベロシティ計測やバーンダウンチャートを。スコープの変動が激しい場合にはプロダクトバックログやスプリントバックログおよびプロダクトオーナーを。求められる品質が高い場合には、自動化された回帰テスト、ユニットテストの自動化などが紹介されています。
こうしたプラクティスの活用どころの紹介は、何からアジャイル開発を始めればいいのか迷っている現場に対して背中を押してくれることでしょう。
始めてチームを組むメンバーが多いとき、オフショアなど分散開発を行うとき、始めてアジャイル開発に取り組むときに活用できるプラクティスなども紹介されています。
ファシリテータの育成と現場から情報発信できる場作りを
日本でアジャイル開発を広く普及させるための提言として、顧客と開発チームのあいだに立てる人材の育成、そしてプラクティスを現場から発信できる場作りが必要だと提言しています。
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