理論物理学者のミチオ・カク氏。ムーアの法則はこの10年で終わり、次は分子コンピュータとの見通しを語る
「何年も前に、私たち物理学者はムーアの法則が終わると予想していました。一方で、分子コンピュータや素粒子コンピュータといった新しいコンピュータが登場すると考えられています。問題は、それがいつかということです」
著名な理論物理学者のミチオ・カク博士は、先日公開されたBigThinkのビデオでムーアの法則の終焉と、その先のコンピュータについて語っています。カク博士は、10年程度でムーアの法則は終わり、次は分子コンピュータだと予想しています。
シリコンの次は分子コンピュータ、そして量子コンピュータ
カク博士は、ムーアの法則が熱と量子力学的な微細化の限界に近づきつつあると説明します。現在のプロセッサの回路は原子20個分の幅しかなく、これが5個になると、熱によってチップが溶ける、あるいは量子論に支配されて電子の位置が決定できなくなり、電子が回路の中にあるのか、外にあるのか分からなくなるため、シリコンによる回路の微細化に限界がくると。
その限界に達するまで10年程度。それまで回路の3次元化やパラレル処理などでなんとかやりくりしつつ、シリコンの次を考えなければならないとカク博士は指摘します。
ではシリコンの先には何があるのでしょう。タンパク質コンピュータ、DNAコンピュータ、光コンピュータ、量子コンピュータ、分子コンピュータなどの名前が挙がります。
有力な候補は分子コンピュータ。ただ、分子トランジスタの大量生産と、これほど小さいものをどうやって回路にするかが課題だとカク博士。
量子コンピュータは、たくさんの課題を抱えているが、最大の課題はデコヒーレンス。外部からの振動や熱で簡単に状態がもつれて計算できなくなってしまうため、これまででもっともしっかり計算できたのは、わずか「3×5=15」。つまり量子コンピュータに計算させるのはとてつもなく難しいとのことです。
カク博士の結論は次のようなものです。まず、今後の10年はムーアの法則をなんとか持ちこたえさせつつ、その次に来るのは分子コンピュータで、21世紀の終わり頃になれば量子コンピュータが登場するのではないかと。
(追記 15:05 ミチオ・カク博士は米国人のため、名称をカク・ミチオ博士からミチオ・カク博士に修正しました。あわせてタイトルも変更しました)