アプリケーションプラットフォームに進出するVMware。Cloud FoundryとvFabricをどう位置づけるのか聞いた
VMwareは、JavaのミドルウェアであるSpringを買収し、PaaS基盤であるCloud Foundryをオープンソースとしてリリースするなど、アプリケーションプラットフォームのレイヤでの動きを活発化させています。これは同社が、仮想環境のインフラを提供する企業から、プラットフォームを提供する企業へとビジネスモデルを変えようとしていることが最大の要因です。
そのVMwareが提供する2つのアプリケーションプラットフォームがあります。Springを中心とした「vFabric」と、PaaS基盤として全く新しく開発された「Cloud Foundry」です。同社はこの2つをそれぞれどう位置づけ、今後どのように展開しようと考えているのでしょうか?
米VMwareでこの分野を指揮するアプリケーションプラットフォーム担当共同社長 トッド・ニールセン(Tod Nielsen)氏に聞きました。
vFabricはvSphereに最適化されたプラットフォーム
──── vFabricの最新版「vFabric 5」がリリースされて約1年です。顧客からの反応などはいかがですか?
ニールセン氏 vFabricのビジネスは好調で、WebLogicやWebSphereといった重くて複雑なインフラから、軽量でシンプルなものへ移行したいという方々を支援する、という提案が支持されています。
また、他社製品は利用のピークに合わせてライセンスを購入しなければなりませんが、vFabricは仮想マシンの平均的な使用量をベースに購入が可能です。そうした価格設定も支持されています。
──── Springフレームワークは日本ではそれほど浸透していなのではないでしょうか。この状況をどう見ていますか?
ニールセン氏 日本企業で興味深いのは、多くの企業で自社独自のフレームワークを使っている例が多いことです。そこにSpringを組み込んでいる例は少なくないと考えており、それゆえにあまり表に出てこないのだと思います。
Java EE 6をどう見ているのか?
──── Java EE 6は、SpringのようにPojoで軽量なフレームワークになってきています。Java EE 6についてはどう見ていますか?
ニールセン氏 Java EEはSpringが切り拓いてきた方向に向かっており、いい方向に進んでいると思っています。大事なのは、Javaでは言語やフレームワークのイノベーションの段階は過ぎているのではないかと、ということです。それよりも開発環境やPaaSといったレイヤを重視する段階にきていると思っています。
──── vFabrcは、vSphereとSpringに最適化したフレームワークという位置づけは今後も変わりませんか?
ニールセン氏 昨年vFabric 5の機能としてリリースした「Elastic Memory for Java」(EM4J)は、仮想環境でのJavaのメモリを最適化するものです。これまでJavaは仮想環境を十分に活用できな面がありました。
またData Directorはデータベースのインストール、プロビジョニング、バックアップなどを容易にし、Database as a Serviceを展開可能にするモノです。現状ではPostgreSQLをサポートしており、夏にはOracle、秋にはSQL Serverをサポートする予定です。
こうしたvFabricが、SpringやvSphereに最適化した環境を実現するという要件は変わりません。
Cloud Foundryをリリースした理由は?
──── ここからはCloud Foundryについておうかがいします。仮想化インフラのVMwareがCloud FoundryのようなPaaSソフトウェアをリリースしたこと、しかもオープンソースとしたことにはどのような意義があるのでしょうか?
ニールセン氏 仮想化されたインフラストラクチャは新しいハードウェアになります。いま、x86サーバのマザーボードの専門家がいないように、そこに専門家は不要になるでしょう。
そこで私たちの会社の戦略としては、上位のレイヤ、アプリケーションのプラットフォームやエンドユーザーコンピューティングへと自社のビジネスを転換することを考えました。
どの時代にもプログラミングモデルがあり、クラウドの時代にはそれがPaaSになるでしょう。Cloud Foundryはそれに合致したものです。それをオープンソースとしたことで、多くの開発者の支持が得られると考えています。
──── Cloud FoundryはvSphere以外の仮想化インフラにも対応するのでしょうか?
ニールセン氏 4月11日にCloud Foundryの1周年のイベントを行いました。そこでAmazon、OpenStack、Eucalyptusなどへの展開をデモしました。多くのIaaSに展開する予定です。
日本のエバンジェリストを募集中
──── Cloud Foundryは日本でのコミュニティも活発です。日本での展開について教えてください。
ニールセン氏 Cloud Foundryのコミュニティに加え、日本のRubyコミュニティやJavaコミュニティなどとも共同で作業しています。日本には特に多くのチャンスがあると考えており、日本でのフルタイムのエバンジェリストを募集しています(同席いただいた日本法人のスタッフに確認したところ、たしかに日本でのエバンジェリストを募集しているとのことでした)。
──── 今後の製品化についてはどのように考えていますか?
ニールセン氏 米国ではいまPaaSとしてβサービスをしているが、最終的には正式サービスを展開する予定です。まずはデベロッパーにトライアルとしてさまざまなアプリケーションを乗せてもらっている段階で、今後はサービスレベル契約などを整えていきたいと考えています。
──── パッケージソフトとしてはどうですか?
ニールセン氏 お客様のほうがうずうずして、オープンソースのコードを取得し、自分で動かしていらっしゃるところがあります。今後その点については詰めていきたいと思っています。
vFabricとCloud Foundryの関係について、
──── 最後に、アプリケーションプラットフォームとしてvFabricとCloud Foundryはそれぞれどういう関係にあるのでしょうか?
ニールセン氏 私たちの言葉では「Path to PaaS」(PaaSへの道)と表現しています。現在の重量級のプラットフォームであるWebSphereやWebLogicなどから複雑性を排除して軽いフレームワークへ移行する、その方向にvFabricがあります。そしてその先にはPaaSのCloud Foundryを目指す、という考え方です。
またCloud FoundryではRubyやNode.jsなどさまざまな言語へも拡張していけます。
──── とすると、vFabricとCloud Foundryについて、開発ツールなどの互換性をとっていくのでしょうか?
ニールセン氏 たしかにいまはvFabric用のツールはCloud Foundryでは動きませんし、その逆も言えます。こうしたツールやコーディング環境といったものは共通化していくのが一般的な方法だと思います。
しかしそれ以前に、まだ私たちの会社は仮想環境の企業だと思われています。vFabricやCloud Foundryといったレイヤにコミットしていることをもっと知ってもらわなければなりませんし、そのためにエバンジェリストも募集しなければならない、いまはまだそういう段階だと考えています。
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