Software-Defined Network/OpenFlow推進の背景と理由を、あらためて語る。ITpro EXPO 2012

2012年10月18日

なぜOpenFlowや、その元となるコンセプトであるSoftware-Defined Networkが推進されているのでしょうか。OpenFlowの仕様策定を行っている標準化団体「Open Network Foundation」のエグゼクティブディレクター ダン・ピット(Dan Pitt)氏が、その背景や基本的な考え方について先週行われたITpro EXPO 2012で講演を行っています。

Dan Pitt氏の来日はInterop Tokyoに続いて今年2度目。精力的にOpenFlow推進役を果たしています。その内容をダイジェストで紹介しましょう。

Software-Defined Networkの背景

ダン・ピット(Dan Pitt)氏。OpenFlowが非常に盛り上がっている日本にくることができてうれしい。ここでは、Software Defined Networkとはどういうものか、そのエッセンスを話そう。

fig

Software-Defined Networkが推進される背景にはデータの爆発がある。40億人もの人がモバイルフォンを使うようになり、しかも音声ではなくデータ通信のために使うようになる。

大規模なサービス事業者であるYahoo!、Google、Microsoftなどは想像できないほどの規模のネットワークに対応しなければならない。

彼らは規模が大きいだけではなく、市場にあるテクノロジーを使っているのも特徴だ。コモディティ化されたサーバ、オープンソース、マーチャントシリコンなどを使ってシステムを構築する。そのためにはオープンな仕様やインターフェイスを使うしかない。

サービス事業者がなぜSoftware-Defined Networkを支持するのか。これまでのネットワークよりもコストがやすく、構成の自動化によって運用にかかる人件費などが節約できる。

fig

迅速にネットワークを構成できるため、サービス展開のスピードアップに役立つ。

これまでのネットワークでは、あるスイッチの構成を変えたらネットワークのほかの部分も変えなければならず、しかも人力で行うため労働集約的でミスもあった。しかもスパニングツリーによってツリー構造の構成しかできないが、これは増え続けるトラフィックに対応できていない。いまはノースサウス(インターネットとサーバ間のトラフィック)よりも、8割はイーストウェスト(データセンター内のサーバ間のトラフィック)になっている。必要なところにコンピューティングリソースを動かすには、サーバの仮想化と共にネットワークの仮想化が必要なのだ。

そこでSoftware-Defined Networkが登場したのだ。

いままで、ネットワークの新しいQoSやマルチキャストなどを行いたいと思ったら、まずどこかの標準化委員会へ持ち込んで方式を決め、そこからネットワーク機器ベンダが独自の方法で実装する。実現するには数年はかかるだろう。できることの多くがネットワークでは制約されてきた。

Software-Defined Networkでは、オープンなレイヤ構成となって、構成や操作をソフトウェアで記述できるため、マルチベンダでの相互運用性やカスタマイズが自由に可能になる。これはコンピュータに対するプログラミングと同じことが、ネットワークに対してできるようになることだ。

fig

Software-Defined Networkは、コントロールプレーンとデータプレーンを分離することで、フォワーディングを集中管理しネットワークの全体像を得ることができる。これが一番大事な要素。

これからのネットワークはいろんなニーズに応えることができ、ニーズが進化しても対応できて、特定のハードウェアにも、スイッチの物理的な構成にも機能が依存しなくなる。

Northbound APIはカタログを作る

Open Network FoundationではOpenFlowの標準化を進めてきており、昨年IPv6にも対応しパケットのシーケンシャルチェックもできるようになった。今後も重要な機能追加を続けていく。

そのときには既存の機器を使いながらでもOpenFlowをネットワークに追加できるような互換性を目指している。

また、いわゆるNorthbound API、つまりソフトウェアによるネットワークコントロールの上位レイヤにAPIが位置するが、これはOpen Network Foundationで標準化するものではないと考えている。いまはオープンソースや商用ソフトウェアなどで15から20の異なるNorthbound APIが作られようとしているが、そうしたもののカタログを作って、足りないものは何か、それを埋めて行くには何が必要かといった議論を進めていくつもりだ。

fig

関連記事

あわせて読みたい

ハードウェア OpenFlow Software-Defined Network ネットワーク




タグクラウド

クラウド
AWS / Azure / Google Cloud
クラウドネイティブ / サーバレス
クラウドのシェア / クラウドの障害

コンテナ型仮想化

プログラミング言語
JavaScript / Java / .NET
WebAssembly / Web標準
開発ツール / テスト・品質

アジャイル開発 / スクラム / DevOps

データベース / 機械学習・AI
RDB / NoSQL

ネットワーク / セキュリティ
HTTP / QUIC

OS / Windows / Linux / 仮想化
サーバ / ストレージ / ハードウェア

ITエンジニアの給与・年収 / 働き方

殿堂入り / おもしろ / 編集後記

全てのタグを見る

Blogger in Chief

photo of jniino

Junichi Niino(jniino)
IT系の雑誌編集者、オンラインメディア発行人を経て独立。2009年にPublickeyを開始しました。
詳しいプロフィール

Publickeyの新着情報をチェックしませんか?
Twitterで : @Publickey
Facebookで : Publickeyのページ
RSSリーダーで : Feed

最新記事10本