米クラウドベンダー「SoftLayer」は、Amazon、RackSpaceとどう戦っているか?
日本ではあまり知られていませんが、Amazon、Rackspaceに続くクラウドベンダーに米SoftLayerがあります。西海岸のベンチャーキャピタルY Cominatorの2011年の調査によると、同社が投資するスタートアップ企業のホスト先としてAmazon、Rackspaceに次ぐ人気を得ています。
昨日4月17日、同社のチーフテクノロジーオフィサー Duke Skarda氏とチーフストラテテジーオフィサー George Karidis氏が来日し、オープンクラウドキャンパス主催の勉強会で、競争が厳しい米クラウド市場で戦う同社の特徴と、その戦略について紹介しました。
内容をダイジェストで紹介します。
コスト削減ではなく収益向上のため
SoftLayer チーフストラテジーオフィサーGeorge Karidis氏。
SoftLayerは2006年に設立した。現在、24000の顧客を抱えており、13のデータセンターと10万台のサーバを管理している。従業員は690人、80人から85人ほどのデベロッパーでソフトウェアの開発も行っている。
代表的な顧客はHeroku、Slideshare、Tumblr、Twitpic、Disqus、Intel、Citrixなどなど。
弊社の顧客に共通するのは、コスト削減のためというより、収益向上のためにクラウドを活用している点だ。
SoftLayerが急成長しているのは、サービスやインフラが、クラウドとしても専用サーバとしてもほぼリアルタイムに提供できるように作られているためだ。
昨年秋には、シンガポール、アムステルダムにデータセンターをオープンした。データセンターは最低4つ、できれば6つのティア1キャリアを利用し、IPv6にもネイティブに対応している。データセンター間も専用ネットワークで結んでいる。
データセンターにセットされた物理サーバは、専用サーバにも、仮想サーバにも、パブリッククラウドにも、ハイブリッドクラウドにも、自由に展開できる環境を用意している。
専用サーバのスナップショットを仮想サーバに展開可能
SoftLayer チーフテクノロジーオフィサー Duke Skarda 氏。
クラウドで重要な要素は、オンデマンドで利用できること、従量課金であること、顧客自身でプロビジョニングできること、API経由で利用できることだ。
SoftLayerの1つ目の大きな特徴は、物理サーバを専用サーバとしても仮想サーバとしても提供できることだ。例えば、データベースサーバとして使うのであれば専用サーバが適しているし、HDDかSSDか、SANかNASかなど、ハードウェア構成を柔軟に変更できる。
こうした専用サーバと仮想サーバを組み合わせることが、弊社のお客様の成功例となっている。
そしてSoftLayerはそのどちらでも、クラウドの運用に合うようにできている。その運用に役立っているのがFlexImageというソフトウェアだ。これは、専用サーバのイメージと仮想サーバのイメージの互換性を実現する。
専用サーバのスナップショットをとって仮想サーバに展開したり、その逆もできる。最初の構成に縛られることなく、柔軟なシステム構成を実現できるのだ。
SoftLayerでは、オートメーション機能によって専用サーバを2時間以内に提供可能にしている。
もう1つの大きな特徴は、データセンター間の接続ができることだ。プライベートネットワークとデータセンター間だけでなく、SoftLayerのシンガポールのデータセンターとサンノゼのデータセンターを弊社の専用ネットワークで接続でき、転送料は無料だ。ということは、サーバ間でのバックアップが無料で行える。通信の課金はインターネットへのアウトバウンドのみだ。
会場とのQ&A ~ ソフトウェアに注力していく
会場 クラウドのAPIの標準化についてどう考えているか?
標準化しようとしている組織はいくつかあり、参加もしている。しかし現在は標準がなく、標準化はいちばん遅いプレイヤーに合わせることにもなるので、成熟する頃には次の進化が起きていると思う。
会場 AmazonクラウドのAPIとの互換性はあるか?
ない。もちろんそれが標準になれば対応するが、例えば今日紹介した専用サーバや複数のデータセンター連係などはAmazonクラウドのAPIでは対応できない。だからといってAmazon APIが標準になれないわけではないが、現在のところすべての機能をカバーできていないため対応していない。
会場 物理サーバと仮想サーバのスナップショットの互換性はどうやって実現しているのか?
ハードウェア、BIOSバージョン、ドライバ、ストレージなどの違いを吸収しなければならないため、かなり大変な作業だった。
会場 ネットワークの仮想化はOpenFlowなどを使っているのか?
いまのところ複雑なVLANの設定で実現している。OpenFlowが利用できるようになれば、もっと簡素化できるのではないかと期待している。
会場 SoftLayerの顧客は、クラウドをコスト削減ではなく収益を得るために使っていると説明されたが、SoftLayerのどのような特徴がそうさせているのか?
SoftLayerが顧客の工場みたいなものになっているのだ。ネットワークやサーバの性能、データセンターの性能、複数のデータセンターをつなげる機能といったものがすべて顧客自身の自社データセンターのようにコントロールできるからだ。
だからといってSoftLayerのコストが高いわけではない。先日Amazonクラウドが値下げをしたが、それと比較しても弊社の方が安い。なぜならSoftLayerの価格にはあらかじめ多くのものが含まれているからだ。
会場 AmazonやRackspaceといった強力なクラウドベンダーにどう対抗していくのか?
それぞれのベンダーで注力しているところが違うと考えている。SoftLayerはソフトウェアにフォーカスしているが、Amazonはマルチテナントクラウドにフォーカスしていて、コンピューティングに関しては透明性に欠けていると思う。Rackspaceはサポートに注力しており、顧客のIT部門の役割を引き受けようとしている。
私たちSoftLayerは顧客に対して、専用サーバ、仮想サーバ、マルチテナント環境などを提供していく上で自動化や顧客自身でプロビジョニングできることに注力している。
より管理や運用をシンプルで楽なものにして、IT部門のひとたちが社内で高い評価を受けられるようにと考えている。例えばAmazonを使っているお客様が、専用サーバとのハイブリッドにしたいというときには弊社に頼ってくれて、それをよりよく構築できるように。
すでにお客様の社内には技術がある。それを支援していきたい。
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