独SAPがモバイルアプリ開発でAdobe、Appcelerator、Senchaと提携。エンタープライズモバイルアプリの時代、本格化へ
業務アプリケーション最大手のSAPが、モバイルアプリケーション開発ツールの主要ベンダであるアドビシステムズ、Appcelerator、Senchaとの提携を発表しました。
アドビはDreamweaverがHTML5とjQuery Mobileに対応していますが、今回の提携ではPhoneGapに対してです。AppceleratorはEclipseベースのモバイルアプリケーション開発プラットフォームの「Titanium」を提供しており、SenchaはモバイルアプリケーションのためのJavaScriptフレームワークのSencha Touchを提供するベンダです(追記:アドビの提携がPhoneGapを対象としたとのくだりを追加しました)。
今回の提携は、業務アプリケーション開発をモバイルの分野にも広げていくというSAPの戦略に沿ったものです。
SAPが発表したプレスリリースから引用します。
By collaborating with Adobe, Appcelerator and Sencha, SAP will enable millions of developers to effectively build mobile apps based on their choice of client architectures — from native to hybrid Web container to mobile Web. Developers will be able to do so while leveraging an industry-leading enterprise mobile application platform from SAP.
アドビ、Appcelerator、Senchaとの協業により、SAPは数百万人もの開発者に対してクライアントアーキテクチャに対応したモバイルアプリケーションの構築を効果的に行えるようになる。それは、ネイティブアプリからWebアプリまでにわたる。
開発者はSAPが提供する先端的なエンタープライズモバイルアプリケーションプラットフォームによってそれが可能になる。
大手ベンダのアドビはともかく、新興ベンダのAppceleratorやSenchaとSAPが提携するというのは予想外のできごとでした。それだけモバイルアプリケーション開発ツールの市場では新興ベンダの存在感が大きいということでしょう。
企業向けモバイルアプリケーション市場が活発化する
SAPはこの提携と同時に、企業向けモバイルアプリケーション開発ツールベンダのSycloの買収も発表しました。
Sycloは、SAP、Oracle、IBMの業務アプリケーションに対応したモバイルアプリケーション開発ツールを提供しています。同社のツールで開発すると、Windows、Windows Mobile、iOS、Android、BlackBerryに対応したアプリケーションを同時に生成することが可能です。
SAPはこの買収により、自社のモバイル開発ツールを持つことになります。同社のライバル企業の視点から見れば、自社業務アプリケーションに対応したモバイルアプリケーション開発ツールを失うことになります。
アドビらとの提携、Sycloの買収の発表は、業務アプリケーション分野でSAPのライバルであるオラクル、IBM、マイクロソフトなどのベンダに対する強烈なメッセージとなります。最大手のSAPが積極的な動きを見せ始めたことで、企業向けモバイルアプリケーション市場は本格化することになるでしょう。
(余談ですが、今回のタイトルの「SAP」が「ソーシャルアプリケーションプロバイダ」と誤解されないよう、以前から呼びかけをしています。以前はSAPとモバイル開発ツールベンダの名前がタイトルに並ぶことなど考えにくかったことですが、予想通り、ついに両者が並ぶ時代がやってきました。「呼びかけ:「SAP」をSocial Application Providerの略として使うのはやめませんか」)
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