インメモリデータベースは将来のデータベースアーキテクチャの中心だ、とSAP
サイベースを買収し、ついにデータベース市場への本格参入を宣言したSAP。しかし同社のデータベース戦略の中心に据える製品は、長年データベース市場を戦ってきたサイベース製品ではなく、同社が新たに開発したインメモリデータベースのHANAです。
同社のロードマップによると、今後サイベースはHANAにプラグインする形でHANAに統合されていくことになっています。
なぜSAPがHANAをデータベース戦略の中心と考えているのか、それは同社が、インメモリデータベースこそ将来のデータベースアーキテクチャの中心になると考えているためです。
同社のCTO ビシャル・シッカ(Vishal Sikka)氏は、5月3日付けの同社のブログに「The SAP HANA Effect」というタイトルで、インメモリデータベースの革新性について主張しています。ちょうどその日本語訳が、SAPジャパンのブログ(最近始まったようです)に掲載されているので、ポイントを引用してみようと思います。
インメモリDBMSは、将来のDBアーキテクチャーの中心
ブログではまず最初に、インメモリデータベースはニッチ製品のままではないか? という疑問を明確に否定し、インメモリデータベースこそ将来のデータベースの姿だと書いています。
インメモリDBMSは、将来のデータベース・アーキテクチャーの中心に位置しています。OLAPとOLTPの両方をサポートするように設計されており、学界での盛んな研究もそれを裏付けています。
続いて、インメモリデータベースはスケーラビリティや扱えるデータ量に制限があるのではないか、という疑念について、HANAのベンチマークで反論しています。
我々が最近行った100TBベンチマークでは、16ノードのIBM X5サーバーにノードあたり0.5TB(合計8TB)のメインメモリを積んだ構成で100TBのBWデータを処理し、ERPレポーティングシナリオでは300ミリ秒~500ミリ秒、アドホック分析クエリでは800ミリ秒~2秒という結果を出しています。
1つの物理サーバに搭載されるメモリには限りがあっても、それをクラスタ化することでいくらでも拡張することができます。ライバル製品であるオラクルのインメモリデータベースであるTimesTenでもそれは同様です。
サーバに搭載されるメモリ容量は増加し、価格は低下しているので、いずれにせよインメモリデータベースは多くの企業にとっての実用的なデータ容量を、容易に扱えるようになるでしょう。
注目すべきは、HANAがOLTPとOLAPの両方に同時に対応できると主張している点です。これは一般的なデータベース、例えばOracleやSQL Serverなどは両方の機能をサポートしていますので、珍しいことではありません。
しかしHANAはインメモリデータベースであると同時に、列方向にデータを格納するカラム型データベースというアーキテクチャで設計されています。一般にカラム型データベースは分析専用のアーキテクチャで、OLTPには向いていないとされています。しかしシッカ氏は以下のように、HANAはカラム型データストアでありながら、OLTPもサポートすると明言しています。
SAP HANAは、1つのハードウェア・1つのOS上でOLTP+OLAPを動かすことができるデータ基盤です。スケールアップとスケールアウトに対応しており、(小型システムから1,000コア以上のマルチノードに至るまで)高い拡張性があります。またSAP HANAは、列ストアでありながらインサートが可能な唯一のインメモリーデータベースであり、高い書き込み性能と高い分析性能を併せ持っています。これはSAP HANAの大きな差別化要因のひとつです。
(略)
SAP HANAはACID完全準拠です。永続性の保証およびバックアップのため、SSDとHDDを組み合わせた永続的なストレージシステムを備えています。
カラム型データベースで本当に実用的なOLTPを実現できているのか、実際に見てみないと信じにくいことですが、SAPジャパンによると、すでにSAP社内ではHANAのOLTP機能を使ってERPが稼働しているとのことです。一体どのようにしてカラム型データベースでOLTPを実用的な速度でサポートするのか、今後の発表を待ちたいと思います。早ければ現在フロリダで開催中の同社のイベントSapphireで何か動きがあるかもしれません。
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