独SAP、これまでのクラウド戦略を振り返る。今年も電撃的な展開はなさそう
クラウドが基幹業務に利用される日がくるのか、くるとすればいつなのか。その動向に大きく影響する要素の1つが、基幹業務向けアプリケーションを提供するERPベンダの動向です。
特に、最大手であるSAPのクラウド戦略がどうなるのかは以前から注目していました。
その独SAPがオフィシャルブログ「SAP.info」に同社のクラウド戦略についてのエントリ「Overview of SAP’s Cloud Strategy」をポストしています。
「2012年は大企業向けERPのクラウドに進展があるのか?」と期待して読み始めたのですが、基本的にはこれまでの同社のクラウド戦略を次のようにまとめたものでした。
- SAPにはBusiness ByDesignというサービスがあるよ
- ほかにもCarbon Impact、Sales OnDemand、BusinessObjects BI OnDemandなどもあるよ
- 昨年、Business ByDesign用のSDKをリリースしたので、アドインが作れるようになったよ
- 将来はHANAのようなインメモリデータベースのオンデマンドサービスもきっと登場するよ
サードパーティがクラウド化しやすい環境の提供
SAPの動向を見ていると、大企業向けERPのクラウド化についてはサードパーティとの提携で実現する方針であるように見えます。例えば、SAP ERPのクラウドサービスは、国内ではNECやNTTデータなどが提供していますし、昨年はAmazon Web Servicesと提携して、同社のソフトウェアがクラウドで動作することを認定しています。
SAP自身では大企業向けERPのクラウドサービスは提供しないが、サードパーティが提供しやすい環境を提供する、というのが、SAP自身からはあまり語られないけれどもSAPが示している大企業向けERPのクラウド戦略ではないでしょうか。
昨年、それまでさんざんクラウドに消極的な発言を繰り返してきたオラクルが、電撃的にパブリッククラウドの提供を発表し、業務アプリケーションスイートのFusion Applicationsのクラウド展開を明らかにしたような展開は、いまのところSAPにはなさそうです。それがSAPのスタンスだ、ということなのでしょう。