独SAP、クラウド戦略として4分野へ注力、コミットメントを明らかに。クラウド版NetWeaverも発表。Sapphire 2012
業務アプリケーション最大手の独SAPは、日本時間の昨日から同社最大の年次イベントSapphireをフロリダで開催中です。
同社はこの数年で業務アプリケーションの専業ベンダから、ビジネスオブジェクトなどの買収によるビジネスアナリティクス分野の拡大、インメモリデータベースのHANAの開発、サイベースの買収などを通してデータベースとモバイル分野の拡大、そして今年のSuccessFactorsの買収などによりクラウド分野を拡大し、多角的なソリューションを展開する企業へと変わってきました。
今年のSapphireは、こうした拡大路線を新戦略としてどのようにまとめあげていくのか、そしてこれまで本格参入を明言してこなかったクラウドにどう対応していくのかが注目されていました。
イベント初日、そして二日目の基調講演では、SAPがコンシューマライゼーションを積極的に受け止め、モバイル、クラウド、インメモリといった新しいテクノロジーを、エンタープライズアプリケーションを変革させる道具として取り組んでいくことが明確に示されました。
初日、二日目の基調講演のハイライトをまとめて紹介しましょう。
SuccessFactorの創業者をクラウド事業担当に
初日の基調講演に登壇したのは、SAP共同CEO Bill McDermott氏。
ITのあらゆるところでコンシューマ革命が起きており、それがいまエンタープライズにも向かっている。
これを体験した顧客は、もっと速く、シンプルで、パーソナライズされたソフトウェアを求めることになる。と同時にモバイル対応によって、どこからでもアクセスできることが必要だ。
ビジネスの競争有意を保つためには、こうしたコンシューマ体験からのインスパイアによってエンタープライズアプリケーションをもっと強くしていかなければならない。
二日目の基調講演に登壇したのは、もう一人の共同CEO Jim Snabe氏。
SAPは40年前、1972年に創業した。この先の40年で何が起こるだろうか? 40年後の技術を予想するのは難しいが、世界を見て予想できることがある。
世界の人口は90億人になり、インドや中国の都市部で特に急速に人口増加が発生するだろう。60歳以上の人口は現在の3倍になり、健康管理、医療、年金といった問題が発生する。
こうした課題が、この先に待っているのだ。これを克服して持続可能な未来にするために、テクノロジーは非常に重要な役割を担っている。
SAPはイノベーションを提供することで、それを支援するつもりだ。
現在の私たちは、パラダイムシフトの渦中にいる。5年以内に、すべてがモバイルになり、すべてがクラウドになり、すべてがインメモリになるだろうと予想する。
こうした技術基盤の上に、ビジネスのためのインターネットを構築していくのだ。
SAPのイノベーション戦略には5つの注力分野がある。モバイル、分析、アプリケーション、データベース、そしてクラウドだ。これらのイノベーションはHANAをベースに行われる。
そしてSAPはクラウドに対してコミットをする。
今年2月に買収したクラウドサービスベンダのSuccessFactorsの創業者、Lars Dalgaard氏をSAPのクラウド事業責任者とし、2011年にはまったくなかったクラウドの売り上げを、2015年までにSAPの売り上げの10%とする。
SAPへの投資をクラウドに進めていく
二日目の基調講演後半には、SAPの取締役でクラウド事業責任者となったLars Dalgaard氏。
SAPはずっと尊敬してきた企業で、いまここに立っているのは人生で最大の喜びだ。
SuccessFactorsは100%クラウドの企業であり、3500社以上の顧客企業を持つ。1ユーザーから20万ユーザーの組織までを抱えており、最小システムからスケーラビリティが必要なシステムまでの経験を備えている。
SAPのクラウド戦略は、4つの領域にフォーカスする。顧客管理、人員管理、財務経理、サプライだ。これらのクラウドサービスを提供すると共に、疎結合でエンド・ツー・エンドの統合を実現する。
そのために、PaaSとして「NetWeaver Cloud」を発表する。もちろん、自社のアプリケーションともインテグレーション可能だ。
これが(買収されてから)この3カ月の成果だ。私たちは、みなさんのSAPへの投資をクラウドへ進めていくことを支援していく。
あわせて読みたい
アプリケーションプラットフォームに進出するVMware。Cloud FoundryとvFabricをどう位置づけるのか聞いた
≪前の記事
日本IBM、基幹業務向け運用管理を付加したIaaS型クラウド「SmarterCloud Enterprise+」を発表